「五箇山と天神信仰」 | 「藍染 迅(超時空伝説研究所改め)」の部屋

「藍染 迅(超時空伝説研究所改め)」の部屋

小説家ワナビーの「藍染 迅(あいぞめ じん)」です。

書籍化・商業化を目指し、各種コンテストに挑戦しながら、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ、アルファポリスなどに作品を投稿しています。

代表作は異世界ファンタジー「「飯屋のせがれ、魔術師になる。」。

富山県西部などでは、長男が誕生すると嫁の実家から菅原道真の肖像を贈るという習慣がある。
正月になると、この木像や掛け軸を床の間に飾り、供え物をするのだ。
 
幕末に前田家が学問奨励のために、道真の肖像を飾らせたという説がある。
 
肖像を飾ったくらいで勉強するようになるなら、予備校の先生は商売上がったりである。
文化や風習とは、そんなに単純なものではあるまい。
 
前田家の先祖が菅原道真につながるという説もあるが、どうも前田家が江戸時代になってから言い始めたことのようだ。
(前田家の家紋は加賀梅鉢と呼ばれるが、道真の後裔を名乗ってから採用したと考えられる)
 
当研究所の仮説はこうだ。
 
五箇山に硝石作りを伝えた菅原家ゆかりの梅一族は、当然ながら道真を崇拝していた。
道真の木像や肖像を祀っていた。
 
五箇山の真宗門徒たちは、自分たちの生活を豊かにしてくれる梅一族を尊敬し、自然に道真崇拝を真似し始めた。
 
なにしろ天神とは、元来農耕の神なのだ。
違和感は全くなかった。
 
硝石生産が軌道に乗ると、五箇山の里人は豊かになった。
硝石のことは秘密とされていたので、近在の村人たちは五箇山の繁栄をいぶかり、羨ましく思ったことだろう。
その床の間に天神像が祀られているのを見て、他村のものはその謂われを尋ねた。
 
「天神様は五箇山の守り神だ」
「村が栄えたのは、ぜんぶ天神様のおかげだ」
 
そう聞かされた旅人は、自分の村に話を伝えた。
そして五箇山にあやかろうと、天神信仰は加賀一体に広まったのだ。
 
前田家は五箇山村民との距離を縮めようと、道真末裔を名乗ったのであろう。
 
前田利家が信長から預かった五箇山という遺産は、400年の時を越えて世界遺産になった。
 

これはすべて想像の産物である。