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前年とは対照的に、2012年は年の後半になるにつれ、精神状態が低下してゆく。あるいは、2012年は私の30年ほどの人生の中でももっともつまらない年だったかもしれない。無味乾燥な日々が続き、楽しい思い出はほとんど残っていない。
10月の段階で、山梨学院のシード落ちを覚悟していた。12位に終わった2年前と比べても精神状態ははるかに下回っていたからである。
この精神状態の低迷は、実は以下のジンクスの崩壊を意味していた。
(勉強ジンクス)
五十嵐久敏は勉強を頑張ると、幸せになれる。
2009年に整数論の勉強を始めた私は、少しずつ勉強を積み重ね、この年ようやく大学数学の範囲にたどりついていた。しかし勉強面の進歩は、精神状態の改善にまったく結びついていなかった。勉強ジンクスの崩壊は明らかだった。
私の人生は、常にジンクス頼みである。ジンクスの存在に気づき、ジンクスを活用するゲン担ぎを考案することがライフワークになっている。
中でも、この勉強ジンクスは存在感の大きなジンクスだった。耳が鳴ってしんどい時も、「勉強を頑張れば幸せになれる」と思うことで、自らを奮い立たせてきた。
(2年前に将棋ジンクスが崩れ、今度は勉強ジンクスも崩壊してしまった。もはや、幸せになるために何をすればよいのかまったく分からない。)
ジンクス頼みの生き方が行き詰まりつつあることに、偶然不信派は深く失望し、精神状態の低迷は一層深刻になっていく。
この年は、インターネットを通してPATMで苦しんでいるのが自分一人でないことを知った年でもあった。インターネットの書き込みからは、多くの人が――書き込みの数からして、日本だけで少なくとも千人以上はいるように思える――PATMで深く傷つき、苦しんでいることが読み取れた。
しかし解決策はまったく見つかっていないようだった。今後とも咳への憎しみに心を支配され、異常な行動を繰り返す状況が容易に想像できた。
状況は絶望的であるように思えた。
光明を見出せないまま、2012年は幕を閉じる。