春になり、気温が上昇してきた頃、アトピー性皮膚炎が発症した。私にとっては11年ぶりのアトピーの再発だった。

―――2001年夏、アトピーが治った時にうけた感銘を私は忘れることができない。当時、アトピーを患っていた私が出会ったのは、西原克成著「アレルギー体質は口呼吸が原因だった」という本だった。この本によれば、口呼吸と冷たい飲み物がアトピーの原因になるとのことだった。当時私は陸上部に所属し、口呼吸で練習し、練習後に冷たいものを大量に飲んでいたので、この本の内容には大いに頷けた。早速、口呼吸を鼻呼吸に変え、飲み物は温めてから飲むようにしたところ、症状は劇的に改善した。

 発症当初、皮膚科に行ってもらった薬を貼ったりしたが、まったく効果はなかった。それが生活習慣をちょっと変えただけで、あっさり治ってしまったのである。

 以降、鼻呼吸と飲み物は温めて飲むという習慣を徹底している―――

 そうした中でアトピーが再発したことはショックだった。

 私は、現在、このアトピーの再発はH社で冷蔵庫内作業を始めたことが原因であると考えている。というのも、西原先生が主催する研究所に「冷蔵庫内作業はアトピーを誘発しうるか」という内容で問い合わせてみたところ、「大いにありうる」という回答をいただいたからである。回答中では、冷蔵庫内作業はやめたほうがよいとアドバイスしていただいたが、せっかく見つけた適職を簡単に捨て去るわけにもいかず、その後も冷蔵庫内作業を続けている。

 こうした経緯で冷蔵庫内作業原因説が有力視されるようになったが、当初は他に原因があると考えていた。

 私が以前読んだ週刊誌の記事には、原発事故の影響で花粉症の患者が急増するだろう、という予測が書かれていた。この記事によれば、原発から放出された放射性物質によって、鼻が本来持つ除菌機能が駄目になり、それまで花粉症でなかった人も花粉症になるだろう、とのことだった。

 私はこの記事を読んで、花粉症よりもむしろアトピーの方が不安になった。そもそも鼻呼吸に変えてアトピーが治ったのは、鼻がフィルターのような除菌作用を果たすからである(らしい)。この記事が本当ならば鼻呼吸をしていても、アトピーが再発するのではないかと不安になった。もっとも、週刊誌のことだからオーバーに書いているのだろう、と思い、さほど真に受けたわけではなかった。

 そうしたら本当に鼻呼吸を続けているにもかかわらずアトピーが再発してしまったわけである。

(私の住む愛知と福島とではだいぶ距離が離れている。にもかかわらず影響が出るほどに放射能というものは恐ろしいものなんだろうか?)

 そんな不安が胸に巣食った。

 私は原発事故に関連するような科学的知識は一切もっていない。放射能がなんなのか、ということもまったく分からない。

 しかしそれでも放射能というものに対しては恐ろしいイメージがある。

例えば同じアトピーであっても、冷蔵庫内作業が原因のアトピーと放射能が原因のアトピーではまったくイメージが違う。

前者は環境を変えれば治るように思うが、後者は体を根本から破壊されていて修復不能であるようなイメージを受ける。これに関しては次のような疑問がうまれる。

(放射能に関する科学的知識を一切もたないにも関わらずなぜそのようなイメージを持っているのだろうか?)

 こう聞かれるとうまく答えられないのだが、放射能に対する恐ろしいイメージはなんとも拭い難いものがある。

 このような事情もあって、西原先生の研究所から冷蔵庫内作業がアトピーの原因になりうるとの回答をいただいた時は少なからずホッとしたものである。