『スルメを見てイカがわかるか!』
養老孟司
茂木健一郎
第四章 手入れの思想
+世界の部分から、全体を知ること
p141 l8
茂木
『インターネットのリンクは便利ですが、それを、
人間が本来持っている想像力のリンクで補わないと、
あまり面白いことにはならないと思うのです。』
日本だとミクシィとかが有名な、SNSの利用ログから
人間関係のグラフを描くことができるという話を聞いた。
確かにこの技術で、ビジネスなどで利用できるだけの
安定した、実に皮相的なレベルでの「人々の関心のネットワーク」
は引き出すことができると思う。
だけど人間の脳の中には意識下でコントロール不可能な
莫大な無意識の海が広がっている。
あるいは、大衆の活動の暗がりには
動機なき無意識のcomplexが形成されている。
本質的に、相互に影響し得る、ウェブ上における
文字に依るシナプスで繋がれたネットワークの構造情報を、
一時的だとしても、固定化し掘り起こすのは不可能である。
なぜならばこのネットワークは純粋な言語によって成立しているし、
常に流動的で不定形な生きたシステムだからだ。
僕達に必要なのは、ネットワークはウェブ上においてさえも、
やはり認識不可能であることをしっかりと自覚することだ。
よもやコントロールなんかできっこない。
ハイパーリンクやブックマークだけじゃない。
リアル世界の僕達の脳を伝っても、リンクは繋がっている。
この世界をビジネスの観点からしか
捉えていない人とか、携帯端末からの接続のみで
つまり、非常にリアル世界に近いところまでしか
潜らないで満足している高校生がほとんどだと聞くと、
お節介甚だしいんだけど、なんだかモヤモヤしてくる。
ウェブはまだ純粋なんだと僕は信じている。
中心から周縁への暴力について、養老くんより先に
茂木ちゃんが触れたのはちょっと嬉しかった。
してやったり、みたいな(?)
アメリカ文学の骨子が「暴力性」と「傷つきやすさ」で
できているというのは、今なら僕もわかるよー、と思った。