はじめて サマセット・モームの「月と六ペンス」を読んだのは、岩波文庫でだった。今からもう30年以上前のことだから、内容の細部にわたっては、すっかり忘却の彼方へいってしまった。改めて数年ぶりに読み直してみて、この小説の良さに、すこぶる感心してしまった。型破りな主人公、ロンドンの株仲買人ストリンドベルク、内面が きわだって特異な変人奇人である、パーソナリティも面白いが、登場人物、各々、が生き生き描かれていた。



話は付随するかどうか、、、同名の喫茶店が京都市丸太町にあり、随分、前に何度か足を運んだことがあった。今は会員制のカフェになって、誰もがはいれる訳でないと、ある古書店の主人から聞いた。

微かな記憶の糸を手繰れば 狭い階段を上りきった左側に入口のドアがあり、店内は、この字型のカウンターの中で オーナーらしき人が、コーヒーを沸かしていた。壁際には本が配置され、整然と椅子が壁側の小窓に向けて並べられていたのを記憶している。


毎年、7月に入ると新潮文庫の100冊という出版社のブックフェアがはじまる。今年2024年度、「月と六ペンス」は、その選に入っていなかった。思えば何故か 妙に、清々しい気になった、、、

万人に選ばれなかった孤高の書。どうやら「月と六ペンス」は、もぐもぐの愛読書であるが故に、胸をはって、堂々、余所者の本の部類にはいったようである。