キャリアコンサルタント夢現塾の鈴木です花

 

 

本日は非認知スキルについてキャリア教育の視点からお話したいと思います。

 

 

  非認知能力とはどんなもの?

非認知能力は、認知能力(知的能力や学力など)以外の能力や特性を指します。

具体的な非認知能力には以下のようなものがあります。

 

 1.毅力(グリット)

  長期的な目標に向かって努力を継続し、困難にも負けずに取り組む能力です。困難に直面しても諦めずに頑張り続けることができる能力です。

 

 2.自己規律:

 自分の行動や感情を管理し、目標に向かって努力する能力です。自制心や計画性、集中力などが含まれます。

 

 3.成長マインドセット

  努力や学習によって能力が成長できると信じる思考スタイルです。失敗や挫折を学習の機会として捉え、成長を促すことができる能力です。

 

 4.ソーシャルスキル:

 他者との良好な関係を築くための能力や、コミュニケーション能力などが含まれます。協力や共感、リーダーシップなどが挙げられます。

 

 5.自己認識:

 自分自身の感情や思考、強みや弱みを理解し、自己理解を深める能力です。自己肯定感や自尊心も含まれます。

 

 6.柔軟性

  状況や環境の変化に適応し、柔軟に対応する能力です。新しいアプローチや戦略を試みる柔軟性や適応性が含まれます。

 

 7.共感力

  他人の感情や立場を理解し、共感する能力です。他者の視点を理解し、適切に対応することができる能力です。

 

 8.問題解決能力

 複雑な問題に対処し、解決策を見出す能力です。創造性や発想力、分析力などが含まれます。

 

 9.ストレス管理:

 圧力やストレスに適切に対処し、精神的な安定を保つ能力です。ストレスを軽減し、集中力や効率を維持することができる能力です。

 

 10.協力性:

 グループやチームでの協力や協調を促進する能力です。他者との協力やチームワークを通じて共通の目標を達成する能力です。

10個の特性を挙げましたが、非認知能力は様々なものがあります。
 
例えば、今話題の「情報リテラシー」なども非認知能力の一つと言えます。情報リテラシーは、情報を適切に評価し、批判的に考える能力や、情報源を信頼できるかどうかを判断する能力を指します。デジタル時代において情報リテラシーは重要であり、正しい情報を適切に利用し、偽情報やバイアスに惑わされない能力が求められます。
 
また、教育でよく耳にする「自己効力感(セルフ・イフィカシー)」も挙げられます。自己効力感は、自分が特定の目標を達成する能力に対する信念や自信の度合いを指します。高い自己効力感を持つ人は、困難にも立ち向かい、目標を達成するために努力する傾向があります。自己効力感は学習や行動のモチベーションに影響を与えるため、学力や成功に重要な要素です。
 

これらの非認知能力は、個々の人の学習や成長に影響を与える要因であり、学業成績や生活の成功に重要な役割を果たします。

 

 

  非認知能力と学力との相関

では、非認知能力は学力にどう影響しているのでしょうか?

非認知能力と学力の関係に関する研究は、心理学や教育学の分野で広く行われています。以下は代表的な研究です。

 

 ・グリット(毅力)の研究:

 アンガーダックスによる研究では、毅力が長期的な目標に向かって努力を継続し、困難に立ち向かう能力を指すとされます。この能力は、学業成績やその他の成功指標に強く関連していることが示されています。長期的な目標にコミットし、困難にも負けずに努力を続けることが、学習の成功に重要であるとされています。

 

 ・マインドセットの研究:

 キャロル・ドウェックによる研究では、「固定マインドセット」と「成長マインドセット」という2つの思考スタイルがあります。固定マインドセットの人々は、自分の能力や資質が固定されていると信じており、努力よりも才能を重視します。一方、成長マインドセットの人々は、努力と継続的な学習によって能力を発展させることができると信じています。成長マインドセットを持つ人々は、失敗や困難に対しても積極的に取り組み、学習の機会として捉える傾向があります。

 

また、非認知能力と学力の関連性を裏付けるデータは多数あります。

以下はその一例です。

 

 1.長期的なコホート研究

 長期的な研究では、幼児期や学校入学前に非認知能力を評価し、後にその子供たちの学力や学業成績を追跡することで、非認知能力と学力の関連性を明らかにしています。これらの研究では、毅力や自己規律などの非認知能力が、将来の学習の成果や学業成績に影響を与えることが示されています。

 

 2.統合されたメタ分析:

 これは、多数の研究を統合し、一貫した結果を得るための手法です。統合されたメタ分析による研究では、非認知能力(例:毅力、自己規律、ソーシャルスキル)と学力の間に統計的に有意な関連性が見られることが確認されています。

 

これらの結果は、非認知能力が学力や学業成績に与える影響を理解する上で貴重なデータですが、非認知スキルと学力との因果関係についてははっきりと明らかにされておらず、まだまだ研究が行われています。

個々の研究の結果を一般化する際には、研究デザインや実施された介入プログラムの特性などの要因も考慮する必要があります。

 

 

  非認知能力とキャリア教育

さて、ブログタイトルにした学校でのキャリア教育と非認知スキルは密接に関連しています。

 

平成23年1月31日,中央教育審議会は答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」をとりまとめ、 幼児期の教育から高等教育まで体系的にキャリア教育を進めるとともに、その中心となる力を、基礎的・汎用的能力としました。その中身は以下の通りです。

 

 (ア)人間関係形成・社会形成能力

 「人間関係形成・社会形成能力」は,多様な他者の考えや立場を理解し,相手の意見を聴いて自分の考えを正確に伝えることができるとともに,自分の置かれている状況を受け止め,役割を果たしつつ他者と協力・協働して社会に参画し,今後の社会を積極的に形成することができる力。具体的な要素としては,例えば,他者の個性を理解する力,他者に働きかける力,コミュニケーション・スキル,チームワーク,リーダーシップ等が挙げられる。

 

 (イ)自己理解・自己管理能力

  「自己理解・自己管理能力」は,自分が「できること」「意義を感じること」「したいこと」について,社会との相互関係を保ちつつ,今後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動すると同時に,自らの思考や感情を律し,かつ,今後の成長のために進んで学ぼうとする力である。具体的な要素としては,例えば,自己の役割の理解,前向きに考える力,自己の動機付け,忍耐力,ストレスマネジメント,主体的行動等が挙げられる。

 

 (ウ)課題対応能力    

 「課題対応能力」は,仕事をする上での様々な課題を発見・分析し,適切な計画を立ててその課題を処理し,解決することができる力である。具体的な要素としては,情報の理解・選択・処理等,本質の理解,原因の追究,課題発見,計画立案,実行力,評価・改善等が挙げられる。

 

 (エ)キャリアプランニング能力   

  「キャリアプランニング能力」は,「働くこと」の意義を理解し,自らが果たすべき様々な立場や役割との関連を踏まえて「働くこと」を位置付け,多様な生き方に関する様々な情報を適切に取捨選択・活用しながら,自ら主体的に判断してキャリアを形成していく力である。具体的な要素としては,例えば,学ぶこと・働くことの意義や役割の理解,多様性の理解,将来設計,選択,行動と改善等が挙げられる。

(中学校・高等学校キャリア教育の手引き(2023年3月))

 

以上のように、キャリア教育と非認知スキルは、相互に補完しあう重要な役割を果たしています。

 

キラキラ基礎的・汎用的能力は

キャリアコンサルタント試験でも類出ですので覚えておきましょう右差し

 

新学習指導要領が目指す「生きる力」

新学習指導要領が、小学校では令和2年度、中学校では令和3年度から全面実施、高等学校では令和4年度の新入生から実施されました。

 

『新学習指導要領リーフレット*』(文部科学省)の冒頭には、新学習指導要領に込められた願いとして、「これからの社会が、どんなに変化して予測困難になっても、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。そして、明るい未来を、共に創っていきたい」と記載されています。これらもまさに非認知能力の育成を目指すものといえます。

 

変化の激しい、先行きの見えづらい時代において、こうした非認知能力は、今まで以上に強く求められています。(*文部科学省(2019)「生きる力 学びの、その先へ」)

 

 

  非認知能力を高めるには

それでは、この非認知能力はどのように高められるのでしょうかはてなマーク

非認知能力を鍛える方法はいくつかあります。以下にいくつかの方法を挙げてみます。

 

 1.目標設定と計画立て

 自己規律や時間管理能力を鍛えるためには、明確な目標を設定し、それらを達成するための計画を立てることが重要です。定期的なスケジュールやタスクリストを作成して、目標に向かって一歩ずつ進んでいくことが役立ちます。

 

 2.挑戦に取り組む

 成長マインドセットや柔軟性を鍛えるためには、新しい挑戦に積極的に取り組むことが重要です。失敗や困難を恐れず、それらを学びの機会として捉えることが大切です。

 

 3.自己認識を深める

 自己認識を高めるためには、自己評価やフィードバックを受け入れることが重要です。自分の強みや弱みを正確に理解し、それらを活かす方法を考えることが役立ちます。

 

 4.トレーニングや練習

 毅力やストレス管理能力などの非認知能力を向上させるためには、それらに特化したトレーニングや練習を行うことが有効です。たとえば、ストレスマネジメントのテクニックを学び、実践することでストレス耐性を向上させることができます。

 

 5.モデルを見る

 成功している人や自分の理想とするモデルを参考にすることも効果的です。彼らの行動や考え方を学び、自分の非認知能力を向上させるためのヒントを得ることができます。

 

 6.フィードバックを活用する

 フィードバックを受け入れ、成長の機会として捉えることが重要です。他人や環境からのフィードバックを積極的に受け入れ、自己改善に活かすことで、自己規律や成長マインドセットを向上させることができます。

 

 7.メンターやコーチングを利用する

 メンターやコーチングを通じて、自己認識や目標設定、問題解決能力などを向上させることができます。経験豊富な人からのアドバイスやサポートを受けることで、非認知能力を発展させることができます。

 

 8.挑戦的な環境を求める

 挑戦的な環境や活動に参加することで、自己規律や毅力、問題解決能力などを鍛えることができます。スポーツやアート、リーダーシップの機会を活用して、自己成長を促進することができます。

 

 9.反省と自己評価

 定期的な反省や自己評価を行うことで、自己認識を高め、非認知能力を向上させることができます。自分の行動や結果を客観的に評価し、改善点を見つけることで、学習と成長を促進することができます。

 

  非認知スキルを測るには?

非認知スキルを評価するための信頼性の高いアセスメントツールはいくつかあります。以下はそのいくつかの例です。

 

 1.グリット・スケール(Grit Scale)

アンガーダックスによって開発されたグリット・スケールは、毅力や情熱に関する質問を含むアンケート形式のツールです。企業などでも利用されています。このスケールは、個人が長期的な目標にコミットし、困難にも負けずに努力を続ける能力を測定します。

 

 2.SEL(Social and Emotional Learning)評価ツール

社会的・情緒的な学び(SEL)に焦点を当てた評価ツールは、生徒の自己認識、自己管理、ソーシャルスキルなどを測定します。このようなツールは、学校や教育機関でのSELプログラムの評価や実施に活用されています。

 

これらのアセスメントツールは、非認知スキルを評価するための信頼性の高い手法として広く使用されています。ただし、適切な評価ツールを選択する際には、使用目的や対象者のニーズに応じて慎重に検討することが重要です。