僕は茉莉子さんに大学の友人に男女平等に反対する1番の理由を聞いて欲しい、と頼まれた。
僕は近くに住む札幌から来た片桐、愛媛から来た松本
福岡から来た岡村の3人を僕のアパートに来てもらった。茉莉子さんが僕たちにカツカレーを作って行ってくれた。

岡村
「確かに男女平等も分かるが、女の人には任せられん仕事というのもあるけん。それに男と女の人の仕事のすみ分けということもあると思う。
女の人たちには悪か思うが、今まで仕事の慣習とかもあるけん、直ぐには変えられん思う。」
松本
「せやな。」
片桐
「お前ら、鈴原は正直に話して欲しいと思ってるぞ。
鈴原の彼女だって、俺たちにお礼にとカツカレー作っていってくれただろうが。
鈴原は子どもの時に妹さんを亡くしてるよな。そして親父さんもお袋さんも働いていて、自分で飯を作ったこともあるって言ったよな。
俺にも姉貴がいるんだ。
俺の家も親父もお袋も夜遅くまで働いていた。だから夕飯は姉貴が作っていた。俺は姉貴が夕飯を作っているのをただ見ているのが申し訳なくなって、手伝い始めたんだ。
姉貴が生理で具合いが悪い時は、俺が夕飯を全部作ったんだ。
俺は個人的に女は女の兄弟のいる男と結婚した方が幸せだと思ってる。
家事は手伝ってもらえる、生理も理解してもらえる。
ところが、岡村も松本も女の兄弟がいない。
女の兄弟がいない、ということは家族のなかで女は
お袋さんだけ、ということなんだ。
お袋さんは親だから何でもやってくれる。布団を敷きっぱなしにしておいても片付けてくれる。洗濯物を放り出しておいても片付けてくれる。作ってくれた弁当の味に文句も言える。
でも、彼女や嫁さんは違うぞ。
彼女や嫁さんが作ってくれた弁当や料理に文句なんて言えねえぞ。
鈴原、男は男女不平等の方が楽なんだ。会社で仕事をし、飲んで帰って来て、風呂に入って、飯食って眠るだけ。こんな楽なことはねえ。
俺は男女平等になっても平気だ。家事をするのは苦にならねえ。料理だって作れる。
違うか? 岡村、松本。そうだろう?
いつか、鈴原の部屋でみんなですき焼きを食べた時、
鈴原も俺もすき焼きを作りながら食べた。ところが、
お前らは、ただ座って食っていただけ。
鈴原が食後の片付けをしていても、何も手伝わずテレビを見ていた。
手伝ったのは俺だけだった。
お袋と彼女や嫁さんは違うぞ。
彼女や嫁さんをお袋の様に思っていたら、結婚も出来なければ彼女も出来ねえ。現に彼女がいるのは鈴原と俺だけだ。
お前ら、鈴原と鈴原の彼女の男女平等に協力しろ!
それがお前らの将来のためでもあるし、幸せのためでもあるぞ!」
岡村 松本
「分かった。協力する。」

片桐たちが帰り、僕は片桐が言ったことを思い出していた。
男は男女不平等の方が楽。
確かにそうだと思った。

次の日、大学の帰り、茉莉子さんとの待ち合わせの場所に行き、ふたりでお好み焼きを食べた。

「もう〜、私が作ってあげる。鈴原って不器用よね」
「不器用ですから。」
「なにそれ?」
「高倉健さんの真似。」
「あっはっは。」  

僕は片桐が話してくれたことを茉莉子さんに伝えた。

「しょ〜もない理由・・ でも、それが男の本音かもしれないわね。確かに、男女不平等の方が男の人たちは楽なだからね。
でも、1番やっかいな理由よね。例えば、今の社会の現状から男女平等に反対する、というのなら、こちらも理論的に反対出来るけど、楽だからって言われちゃうとね・・
でも、鈴原も片桐君も男女平等に賛同してくれている。そして、片桐君のお陰で岡村君と松本君が男女平等に協力してくれることになった。進歩よ。
やっぱり、こういう地道な積み重ねが男女平等への1番の近道かもしれない。」 
「それとジョンレノン方式。」
「全ての行動は文書を書く時も含めて男女平等を前提に行なう、よね?
あっ! 鈴原、どうして私のお好み焼きをひっくり返すの失敗しちゃうのよ!? 鈴原ってブキね。
このお好み焼き代は全部鈴原が払って!」
「えっ?」
「えっ?じゃない! 男女平等よ。
私が、鈴原の分のお好み焼きも作ってあげる。」

そう言うと、茉莉子さんは微笑んだ。


つづく