僕は子どもの頃、手塚治虫さんの漫画が大好きだった
鉄腕アトムを欠かさず見ていた。
ところが後年、手塚治虫さんは鉄腕アトムが嫌いだと言った。アトムには善の心しかない、悪の心を持たない者は不完全だと。

日本が日中戦争から太平洋戦争に向かう約4年間、
吉川英治さんの書いた新聞連載小説、宮本武蔵が大人気だった。
その当時の男たちは宮本武蔵の恋人であるお通さんに
憧れた。そして、もうひとり宮本武蔵に想いを寄せる
朱美という女性を毛嫌いした。
後年、吉川英治さんは、お通さんは女ではない、男が勝手に作りあげた女のようなもので女ではない。本当の女は朱美だと言った。

僕の勤めていた会社の上司だった課長は、僕が結婚すると、一緒に飯を食おうと言って昼食をご馳走してくれた。そしてその時、こう言った。
人は誰にも秘密がある。例え夫婦であっても秘密がある。それは不思議なことではない。当たり前のことだ

その時の僕の直属の上司の係長は女性だった。
係長はある時、僕にこんなことを言った。
女は心に蛇を一匹飼っているの、でも蛇が居なくなると女ではなくなるの。

僕の周りでも独身の男たちが多い。結婚しないのか
出来ないのかは分からない。
ただ彼らの言う理想の女性は多くの場合、蛇のいない
自分が作りあげた女のようなもので女ではない人ばかりだ。
存在しない女性を探していても結婚は出来ないと思う