PUBに見るヴァンビエンの今(後) | 手のひらの中のアジア

PUBに見るヴァンビエンの今(後)

ヴァンヴィエンにおいて僕が「ギャル」や「不良少年」と呼んだ彼らは、決して「柄が悪い」のとは違う。昼間はそれぞれレストランやらツアー会社、売店、ゲストハウスといったところで皆一生懸命働いていて、明るく親切で親しみやすく、いいやつばかりだ。


その町の表舞台で活躍する彼らが花金も含めた週末の夜、一堂に会する場所がある。


町の真ん中で派手な電光板が一際目立つ「NAM LAO PUB」。


PUBとはいうが、いわゆるディスコだ。平日の夜にはほとんど客もなく、それこそまさに寂れた田舎町の一軒パブでしかないその姿も、金曜の夜から土日の夜にかけての週末には嘘のように華やかになる。


町中の若者が皆ここに集まるのだ。昼間のツアー会社のお姉ちゃんもツアーガイドの男の子も、レストランのウェイトレスも周囲のゲストハウスのスタッフも、町のレディーボーイも。インターネット屋の兄さんさえも少しばかりショップを早めに閉めてPUBへと急ぐ。普段町で見かける若者が皆この場所へ。


小さなライブハウス程度の大きさしかないフロアスペースは超満員になる。これまでラオスでは見たことのない、短いスカートを履いたきわどい格好の女の子までいれば、カウンターで渋く酒を飲む人、テーブルを囲んでわいわいと盛り上がるグループ、無機質な機械音のリズムに合わせて体を揺らす人、最新だか古いのだかわからないディスコソングで踊る人、時折かかる流行のポップス。


夜の11時を過ぎた頃からさらに熱気を増すNAM LAO PUB。平日よりも一時間営業時間が長いという週末は最後まで客足が減ることがない。後半に流れるラブソングでは、全員で大合唱になる。まるでそれがお決まりの流れであるかのように。夜も更けて深夜一時、ゆったりとした最後の曲が終わる頃、少しずつ皆店をあとにしてゆくのである。


大きな街であればどこにでもあるような夜の一幕かもしれないが、ここがラオス、ヴァンヴィエンという小さな町であることが面白い。


この町と人には、これまでの街や人には表立って見えることのなかった少しばかりの「危うさ」と「色艶」を感じるのだ。基本は他と何も変わらないにもかかわらず、その上に成り立つこうした感覚。


これが「異質」を構成する要素なのかどうか、はっきりとは断定もできないし、まだちょっとわからなくもあるけれど、僕はここで少なからず、バンビエンの今、というものを見た気がした。