静けさの中で一服の絵画を鑑賞するのが好きだ。






「アンティーブで夜釣り」を目の前に石の壁、レンガの床、
そして海から吹く風を浴びながらしばしその前で時を過ごしながらそう思った。

時として引き寄せられるように出逢う絵画がある。

数多の作品の中で磁石のように吸い寄せられるようなもの。
決して有名だからでも、気を衒った仕掛けが施されているわけでもない、なんというか「エネルギーとして合うもの」、とでもいうのだろうか。

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今夏の始まり。思いがけないことが重なって起こり、
「いつか」行ってみたいと思っていた南仏はCôte d’Azurの紺碧の水に身を沈めている。

視界の80%以上は青の世界。しかもコバルトブルー、エメラルドグリーン、群青など言葉ではとても言い表せない数の青の世界なのだ。







朝、夜と仕事の合間にせっせとこの青の世界に身を委ねるた5日間。
1日すぽっと空いた午前中にCannesから30分ほど列車で揺れてAntibesにやって来た。

街は紀元前5世紀ごろにギリシア人によって建てられた街で交易で栄えた場所。地中海の歴史とロマンがたっぷり詰まっている。

地図を持たずに歩いていると田舎の漁村風で小径がラビリンスの如くとても楽しい。私の好きな街散策の仕方だ。
カモメの声を聞きながら歩くと海に出た。太陽の遠慮のない陽射しとその光に反射した海を真白のマストをあげてセーリングしている人たち。
汐風を身体の隅々まで行き渡らせるように深呼吸してしばらく海を見ていた。





静かだった朝の街はいつしか観光客の声に覆われていて、私もその声に沿ってまた散策を始めた。
目の前には市場。季節の野菜や花、ここでとれるラヴェンダーの精油、そして香辛料、チーズ、サラミが所狭しと並んでいる。
朝ごはんをスキップされていた私のお腹は小さなイチジクを目の前に「きゅっ」と鳴った。店のおばさんの話だとおばさん宅の庭先で採れた朝イチのイチジク。「正真正銘何もしていないBioだよ」と。
一盛り買って近くの階段上のベンチで頬張る。
この辺りの太陽がぎゅぎゅっと詰まった味がした。

朝食を食べ終え小さな坂を下るとCathedralの文字。
白を含んだオレンジ色とベージュのファサードが青い空、海に映える。
中を覗くと柔らかな光が差し込み温かな空気が流れていた。



外に出て横を見ると城塞、ピカソ美術館。


「アンティーブで夜釣り」を見る為のシナリオが出来ていたかのような、そんな旅だった。

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ぶらっと旅のメモ


*列車
ニースからは、カンヌ方面行きのTER電車で20分程度
カンヌからは、ニース方面行きのTER電車で10分程度
http://www.ter-sncf.com/Regions/paca/Fr/Se_deplacer_en_TER/Avant_mon_voyage/Recherche_d_itineraires/Default.aspx

*バス
ニースからはメリディアンホテル前発のカンヌ行きの200番のバスで約1時間30分
カンヌからは市庁舎前発のニース行きの200番のバスで約30分
中心街に一番近いバス停は、「Directeur Chaudon」

ピカソ美術館(2023年9月5日現在)
入場料6ユーロ、月曜日以外の毎日 9月16日-6月14日 : 10時- 12時/14時-18時、6月15日-9月15日 : 10時 – 18時(17時30分までに入場)7月、8月の水・金曜日は20時までオープン(19時30分までに入場)
休館日:1月1日、5月1日、11月1日、12月25日


ペイネ美術館 入場料3ユーロ


プロヴァンス市場

ピカソ美術館の階段を降りたMasséna広場
そこにある屋根付きのマーケット
月曜日以外の毎日6時-13時