3月は韓国ドラマの改編期。
地上波でもケーブルでも新ドラマが続々とスタートしている。
中でも今クール期待のドラマは何と言っても
IU(アイユー)主演のtvN「私のおじさん(나의 아저씨)」。
3/21からスタートしたばかり。
不幸な生い立ちにも必死で生きようとする
主人公(アイユー)と
格差社会の中で企業戦士として戦う
普通のおじさん(イ・ソンギュン)との
心温まる交流を描いた作品とのこと。
コーヒープリンス1号店で人気を博した
イ・ソンギュンとの年の差が18歳というのも話題だが、
注目はキム・ウォンソク監督と脚本家パク・ヘヨンの組み合わせ。
キム監督は「未生」(2014)、「シグナル」(2016)など、
おきまりの韓ドラの枠を超えた社会派ドラマを手がけ
高評価を受けている、いま一番ホットなドラマ監督だ。
また脚本家パク・ヘヨンを一躍有名にした作品
「またオ・ヘヨン」(2016)は、貧富の構図から離れた
良質なラブストーリーとして愛されたドラマ。
実はどれも「私のおじさん」同様、tvNで放送したドラマ。
ここ数年のtvNドラマは秀逸。
キャスティングもストーリーも魅力的で、完成度が高く、
韓ドラの底力に驚くばかり。
地上波ではできない、地上波とは違う
テーマや企画が功を奏していると言える。
私的、第1話のベストシーン
養護施設の費用未払いで退出を迫られる寝たきりの祖母を
深夜こっそりベッドごと連れ出すアイユー。
必死で押すベッドの上空にいつもより大きな月が輝いて……
この場面…?
エリオットが自転車のカゴにE.Tを乗せて、
誰にも見つからないように森へ向かうあのシーン…
夢中でペダルを漕ぐエリオットの自転車が
突然宙を舞い、大きな大きな月を横切っていく…
そう、かの有名な「E.T」」のあの場面を彷彿とさせる。
続いて、
その後、二人で迎えを待つバス停のシーン。
カートの中の毛布を纏った老婆は、
まるでエリオットが外に連れ出したE.Tの姿そのもの。
間違いなく監督が意図したE.Tオマージュ。
それならば、
彼女(アイユー)が匿って連れ出した老婆は
何の象徴だったのだろうか?
貧困、差別、絶望?
それとも家族、愛、尊厳、平等?
彼女を追いかけているのは誰だろうか?
何から逃げようとしたのだろうか?
社会、権力、倫理、束縛、お金?
それとも良心?人生?
彼女は…
果たして、逃げたのだろうか
………
ベッドを押す両手の拳に、
歯を食いしばり立ち向かう横顔に、
生への強い決意が垣間見える。
そして大切なものを
絶対に離さないという意思…
彼女は、逃げたのではない。
戦っているんだ…
無慈悲で殺伐とした社会との非合理的な戦いを
この夜、始めたのだ。
過酷な人生に立ち向かっていく決意と共に…
そうだ。
エリオットも逃げたのではなかった。
名画「E.T」のラストシーンを思い浮かべてみる。
アイユー演じる主人公が生きるために必死で漕ぐ”ペダル”の先に
自由や希望が待っていることを願いつつ…
なんだ…
たったこの場面ひとつで
もうこのドラマにはまってしまったのか…
今後の展開が楽しみ。
見応えのある作品になりそうだ。