屋台が並ぶ、混雑した河川敷には行かない。

もう10年以上前から、高台の、とある施設の庭を借りて花火を観ている。
他に数家族がその場所を知っていて来る。
花火がよく見える特等席だったが、ここ数年は眼下の木々が高く成長してきて、視界を邪魔するようになってきた。

そのためか今年は遅く到着したが、他の家族は来ていなかった。一番乗りだったので、かろうじて庭半分の、木々が邪魔しない方で鑑賞できた。


今年は、両親と妹夫婦は旅行に出掛けたので、姉家族とうちらだけ。いつもの6畳のござにゆっくり座ると思いきや、予想以上にいっぱいになった。
そうよね、子どもたち皆、身体が大きくなったのだものね。



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夫は毎年、出張が入ることが多く、一緒に花火を観たのは14年間のうち、最後の夏を含めても半分にも満たなかった。


夫が逝ってから3度目の花火大会。
初めての年は、苦しくて苦しくて仕方なかった。『去年は、ここで一緒に観たのに』と、涙が溢れた。


二年目も三年目の今年も果てない寂しさ、
哀しさの中にいる。直後のあの激しい苦しさほどではないが、『何が楽しくて観に来るのだろう』と思う。
美しい花火を見ても楽しい気持ちにはなれない。今年こそは少しはそんな気持ちになれるかしらと足を運んでみるのだが…。



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途中、壮年のご夫婦が花火を観に来た。 木々が邪魔しないこちらの方に招いた。
お互い面識はないが『毎年来ている家族』という認識なのは交わした会話から分かった。

「ここは特等席なのに、木が伸びてきちゃっていけないですね」ご主人がおっしゃった。「今年は、とうとうライトも球切れしちゃいましたね。」

そう。ご夫婦がいらした時に私も気づいた。この建物、庭に人感センサーライトが付いているのだが、管理不十分か今年はライトが点かなかった。

子どもたちが小さい頃、前を通るとライトが点いてしまい、花火を観るのに都合悪いから、「おとなしく座ってなさい」と注意したものだ。


ところが…
そんな話をしてしばらく花火を観ていたら、突然、
人感センサーライトがパッと灯ったポーン

「わ!びっくりした!」「何で急に?」と口々に。
ご婦人も「え?何だかコワいわね…」と言い、ご主人は「ネコでも横切ったんだろ」
と言った。


私はすぐに、ご夫婦には聞こえない小声で子どもたちに言った。「お父さんかな?一緒に観たくて来たのかもてへぺろ

息子が、やはり小声で「めんどくさっ」と呟いた。

何と言われてもいい。
私はそう信じたいんだ。

その後も、ライトが点いて消えてが、二度あったが誰も気にしなかった。
私だけがこっそり確認した。
ネコなどいなかった。


久々の不思議現象に少しわくわくして…






花火もクライマックス。
ふと、座っている足下を見て、ギョッとしたポーン

私と長女と息子が座っている三角形の真ん中に、クモが座っていた!這っていたのではなく、ドカッと座っていたキョロキョロ
手でOKサインしたときの、Oの大きさの
割とガッツリなクモが!


『あら、お父さんたら…』と思いましたが、虫嫌いな私。クモさんと一緒の花火鑑賞は数分しか保たず『ごめんね。次は違う生き物で来てよ…』紙コップを使ってご退散いただきました。

長女は少し怯えながら「ねぇ…このクモ、
結構エグいね…」


エグい、て笑い泣き?!
そりゃまあ、お父さんだから
クモになってもでかいわけよね。




突然の乱入者に、私と長女は





花火のクライマックスを見逃しました。





花火大会も終わり、





センサーライトの前に立っても点かない暗闇の中、






ござを畳んで帰路につきました。