子どもの頃、お盆を過ぎた辺りから
夏も終わっちゃうな~、て寂しかった。
二学期の準備しながら
学校始まっちゃうな~、て気が重かった。


そんな気持ちは、大人になってからも
同じで
楽しい夏休みを過ごした後はいつも
明日から仕事かぁ…だった。


二年前の夏は、夫が退院して家族とずっと一緒に過ごせた、最初で最後の夏だった。


そんなこと夢にも思わない私は、休みが明ける朝、例年のように、ため息をついた。
「はぁ、仕事始まっちゃうな…」


でも本当は、そんなため息じゃなかった…


前日に…惨い、惨い告知をされたんだ…


あんなに耐えて、治療を乗り越えたのに、


あんなにすぐに再々発するなんて…




夫は、答えた。
『仕事に行けるって…、普通の生活が
 できるって…、幸せなことだよ…。
 羨ましいよ…。』


私、何も言葉が浮かばす
体をかたくして、
黙り込むしかできなかった…



夏休みの終わりを惜しみながら

それぞれの生活に戻っていくこと。

そう、あれは何という幸せ。




そして、あの『手放しの幸せ』に浸れることは、私にはもうない。
それでも、夫が教えてくれた幸せの意味を
涙に濡れながらも思い返してみるんだ。





夫が絶望の中で







必死に言葉にして







伝えてくれたことだから…