「ドキュメント高校中退-いま、貧困がうまれる場所」(ちくま新書)という本を読みました。
底辺高校の壮絶な様子を垣間見ることができます。
抜粋して書いてみます。
中退者の多くは親から言われて仕方なしに高校に行く。
だが、勉強はまるでだめ。
九九はいえない、割り算や分数計算もできない、アルファベットも書けない。
学校の勉強にはついていけないし、学校は楽しくない。
フラストレーションがたまるのか、イジメも蔓延している。
そのうち窃盗や傷害事件などをおこして高校を中退する。
だが、高校中退者に対する世間の目は厳しい。
男性は劣悪な状況での労働を余儀なくされ、アルバイトの仕事を見つけることすら難しい。
女性はキャバクラや風俗店などではたらくことも少なくない。
彼らの多くが、差別に苦しみ、社会から見捨てられたと感じながら生きている。
そんな子どもが毎年約10万人も生まれている。
高校中退者の多くは底辺高校に集中している。
小学校レベルの勉強でつまづいている子どもは、底辺高校にしか行けないからだ。
入試で答案用紙に名前とアンパンマンの絵しか描いてなくても受かるというから驚きだ。
底辺校に入学した子どもたちは勉強はしないし、問題を起こすので、教師たちは大変。
子どもの問題行動の裏側には家庭の問題があり、極めて根深い。
それに、問題のある子が多すぎてとうてい対処できない。
勢い、教師たちも生徒に退学を勧告することになる。
生徒を退学に追い込む教師が評価されるようになるという。
学校は子どもの未来の可能性を開く役割を担うはずだが、まったく機能していない。
高校中退問題と貧困問題は密接なつながりがある。
高校中退者の多くが貧困な家庭の出身者なのだ。
貧困な家庭の子どもの生活は凄惨を極める。
家庭の収入は不安定。
父親は仕事がなく、荒れて子どもに暴力をふるうことも日常茶飯事。
女の子の場合はさらに悲惨で性的虐待を受けることもあるという。
このため、家にいるのがいやで男の家を泊まり歩くようになる。
すると、在学中に妊娠して出産、シングルマザーとなり、さらなる貧困へと向う。
貧困がスパイラル化している。
また、母子家庭も多い。
母親は少しでも高い収入を得るために、昼間はアルバイト、夜は水商売に働きに出る。
当然子どもの世話はできない。
そのうち体を壊して水商売もできなくなり、貧困に拍車がかかる。
こうなるともうお手上げ。
子どもは学校への交通費が払えなくて中退することも。
こんなことが珍しくないという。
いまの日本では地域コミュニティーが機能しないため、子どもの世話をする人が親しかいない。
だが、その親も自分のことで精いっぱいなのだ。
それに、自分たちも親からあまり世話を受けていないので、子どもの世話の仕方がわからない。
ご飯の食べ方、おむつの替え方、夜は一緒に寝る、そんな当たり前のことも知らない。
ネグレクトをしているという自覚もないという。
そして、ネグレクトを受けている子どもたちの多くが虫歯だという。
歯を磨くという当たり前のことも指導を受けていないし、親が歯医者にいかせることもないからだ。
食事は三食とも食パンかスティックパン。
野菜スープなど栄養のあるものを食べることはない。
親自身も栄養のあるものを食べたことがないのだから、子どもに料理をふるまえるはずがない。
とにかく想像を絶する世界だ。
貧困と精神的飢餓が負の連鎖反応を引き起こしている。
そして、子どもの貧困率はいまも上昇し続けている。
これはつまるところ、新自由主義的政策によって子どもを守る福祉システムが破壊され、裕福な家族によって保護されている子どもとそうでない子どもの格差が拡大したため。
著者は、今後は高校を義務教育化、高校を専門教育中心に転換すること、子どもを守るネットワークを構築すべきと説いて結んでいます。
世界にはいろいろな問題があるが、日本にも同じようにいろいろな問題があります。
一人の人間で出来ることはたかが知れている。
でも、身近なところから少しでも社会を変えていきたいですね。