Uさんは火葬場で

運営補助として働いていた。
 

火葬場は町のはずれに位置し
日中は静かで落ち着いた場所だった。



しかし、夜になると
その雰囲気は一変する。
 

何とも言えない
重苦しさに包まれるのだ。
 

Uさんも
夜の不気味さは苦手だった…



特に、火葬が行われた後の夜は
その感覚が強まる。
 

Uさんは朝早く出勤して
夕方帰宅出来るよう
勤務時間を調整していた。


特に夜

火葬場にいるのは
避けたかった。


 

ある日

火葬場が非常に込み合った時があった。
 

仕事量も多く
夜まで仕事をすることを上司にお願いされた。
 

交渉の末

翌朝いつもより早く

出勤することで手をうった。


 

その火葬場には火葬炉が3つある。
 

普段は2つしか使っていなかったが
その日はすべての火葬炉を使うことになった。



実はこの3つ目が問題だった。
 

職員達の中でも

不思議な現象を体験した人が多く
 

3つ目の火葬炉を動かすことに
多くの職員が反対していた...


 

上司も3つ目の火葬炉で
不思議な体験をしていた。
 

内心嫌々だったようだが
本部からの決定なので
従うより他なかった。


その日Uさんは
いつもより更に早く出勤した。
 

Uさんの仕事は
ご親族達の待機場所の片付けと
火葬炉のある部屋を片付けること—


 

営業開始時間までに
掃除を終わらせること—
 

それが上司との
夜仕事をしない条件だった。
 

火葬炉の部屋の掃除は
誰か他の人が来てからにしようと

最後に残していた。


 

そんな思惑と裏腹に
待機場所の片付けは
あっさりと終った。
 

気を利かせて前日のうちに
ある程度の片付けを
してくれていたようだ。


覚悟を決めて

火葬炉の掃除を始める。
 

重い扉を順番に開けていく。
そして、最後の3つ目の火葬炉—
 

鍵を回して、扉を開ける。
扉が完全に開いた。


 

そこには、部屋びっしりと
人が立っていた。
 

皆、火葬炉の方を向いていた。
 

その全員が一斉に振り返って

Uさんに向き直った。
 

その瞬間

Uさんの意識はなくなった...


 

出勤してきた上司が

火葬炉で倒れているUさんを発見した。
 

しばらく休憩室で横になり

午前のうちに帰された。
 

3つ目の火葬炉は

成仏できない人達のたまり場なのだろう。
 

無事に成仏されることを

ただ祈るしかなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【YouTubeショートverはこちら👇】

 



【stand.fm verこちら👇】