K君が小学生の頃
彼は長期休みは祖父の家で
過ごすことが多かった。



祖父の家には
黒電話があった。
 

当時はすでに携帯電話が普及していて
K君にとって黒電話は珍しいものだった。



K君は祖父から
電話のかけ方を教えてもらい
そのレトロなダイヤルを
回すことに夢中になっていた。



電話をかける用事があるたび
K君は率先してダイヤルを回すようになった。
 

そして、電話が鳴ると
真っ先に電話に出るようになっていた。


 

ある夏休みのこと—
 

K君はいつものように
祖父の家に遊びに来ていた。


ある夜
みんなが寝静まった頃。
突然、黒電話のベルが鳴った。
 

K君は反射的に飛び起きた。


 

寝起きでぼーっとする頭で
黒電話に向かって行く。


ジリジリジリと呼ぶ
電話を取るK君。


 

受話器から
相手の声が聞こえない。
 

…いや、かすかに
何かつぶやく声がしている。
 

「なんの御用でしょうか?」
 

返答はなく
ぶつぶつと言い続けていた。


 

K君がどうしたものかと
固まっていると
 

祖父が鬼の形相で
部屋に入って来た。
 

その勢いのまま
K君から受話器を奪い取り
 

『二度とかけてくるな!』
 

と怒鳴って電話を切った。

 

 

普段の優しい印象からは
想像もつかない祖父の言動に
 

K君は怖くなって
泣いてしまった。
 

祖父は少したじろいでいたが
「早く寝なさい」と言い
 

K君は素直に
布団に戻って眠りについた。



翌朝、話があると
祖父の部屋に呼ばれた。
 

子供ながらに
夜起きていたこと
 

電話をしていたことを
怒られるのだと思った。


ただ
祖父の話は意外なものだった。
 

夜中にかかってくる
電話には出てはいけない—
 

あのままずっと聞いていると
最後に、呪いのようなものが
聞こえるらしい。
 

それを聞いた翌日
祖母は入院したとのこと。


 

夜中の電話以外は問題ないと
祖父は言った。
 

電話の相手は
人間だったのか…
 

それ以来
Kさんは黒電話を見ると
体が強張ってしまうそうだ。

 

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