夏の熱い日。
私は友人Aの家に遊びにいった。
 

日中にAと

さんざん遊び倒したおかげで
汗でベタベタだった。



私は、Aの家に入るなり
「風呂貸して」とお願いした。
すると、Aは

何故か頑なに拒否をする。



むっとした。
減るもんじゃないだろ。
 

私は脱衣所と思われる

部屋の扉を開く。
 

そこには—
 

大量の荷物が詰め込まれた
風呂場があった。



これじゃ入れないな…
 

風呂場を見て
固まっている私の後ろから


「スーパー銭湯に行くぞ」
 

と、Aが言った。


 

広い風呂の方が
気持ちいいよななんて思い
 

A宅から徒歩数分の
スーパー銭湯に行った。
 

風呂から上がって
コーヒー牛乳を飲みながら涼んでいる時

 

ふいにAが

あの風呂場の話をはじめた—


 

Aは過去にあの風呂場で

恐怖の体験をしたらしい。
 

その日を境に
風呂場を使わないようにしているそうだ。


 

ある日、Aが自宅の浴槽に熱々のお湯を張って、
浴槽にゆったり浸かり、リラックスしていたそうだ。

Aが体を洗おうと
湯船から出かかった時に
異変が起こり始めた。
 

急に湯船からの湯気が増え
浴室内が霞がかった。


その湯気が
人の形のように見えて
背筋がぞくっとした。
 

すると突然

浴室の電気が点滅を始め、換気扇が止まった。
 

Aはパニックになり
風呂場から出ようとした。


今度は、浴槽の中からボコボコと泡が立ち、

明らかな人の手で右足を捕まれた。
 

すでに、限界レベルでパニックだった。
 

浴槽から飛び出し

浴室を出ようとする。
 

今度はドアが開かず…


 

私は固唾を飲んで
Aの話を聞いていた。
 

Aはドアを蹴破って
浴室を飛び出した。
 

 

 

そして、脱衣所の鏡越しに
浴室内にいる数人の人影達と
目が合い、気を失ったそうだ。

思い返してみると

嫌に開放的だと思ったが
ドア、なかったな…


その一件以来Aは

スーパー銭湯の常連になった。


 

そう言えば...
 

Aの風呂場の
荷物の山のすき間から
 

こちらを覗く『目』と
視線が合ってたなとふいに思い出した。
 

Aには言わないでおこう…

 

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