クリーニング屋を営むRさん。
 

父の代から引き継いだ
地元でもちょっと人気のお店だった。

店の立地はオフィスビルに近い
マンションが多い場所で
スーツやワイシャツを預かることが多かった。



実はこの店、人気の秘訣があった。
Rさんは簡単なお祓いができるのだ。



時折預かった衣服に、
『何か』が憑いていることがある。
 

Rさんははっきり見えるわけではないが
黒や紫の靄のようなものが

衣服に憑いているのが見えるのだ。



そう言った衣服を預かると、
『特殊』と書いたタグを付けて

クリーニングに回す。


 

通常のクリーニング後に
清めた水と、お香、塩などを使って
憑き物を祓うのだ。


 

特殊クリーニングをした後は
衣服が輝いたように見える。
 

お客さんの話によると
見間違えるほど
調子が良くなるらしい。
 

そのため

ゲン担ぎのリピーターが多かった。



ある日、ご新規さんがスーツをもってきた。
最近近くに引っ越したらしい。
 

その方のスーツを見ると
今まで見たことのないほど
 

禍々しく黒くて重い靄が
スーツ全体を覆っていた。


 

正直に言うと
受け取り拒否をしたかった。
 

ただ、不気味だから

なんて理由で断るわけにもいかず…
 

「すこしお時間かかります」
 

適当な理由をつけて預かった


 

そのスーツを通常通りクリーニングして
お祓いをする手順になった。
 

普段は一人で行うのだが、
その時は父にヘルプを頼んだ。



父は一目見るなり
「すごいの預かったね…」
と驚いていた。
 

父はRさんよりも視える人だ。
 

どうやら
生きてるものと死んでるものとが

混ざった複数人の霊がまとわりついているらしい。


 

預けた方の仕事が想像される。
が、変な詮索をするのはよろしくない。
 

父と二人で作業を開始した。
 

いつもの作業手順を倍以上も繰り返し

何とか綺麗にすることができた。


スーツの持ち主は
仕上がり予定の

日時きっかりに受け取りにきた。
 

一目見てえらく感動していた。
 

「また来るよ」といって

去っていくお客様を見送る。
 

(あの人も視える人だな)
 

いやな想像だけが膨らんでいった…

 

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