雪が降りしきる冬の夜。


Rさんは実家に帰省して、
静かな部屋で、こたつに身を寄せ
その温もりに安堵していた。

外の世界はすっかり白く変わり、
厳しい寒さから隔離された
こたつの中は非常に心地よかった。



ふと、こたつの布団の中から
小さな音がするのに気が付く。
 

何かが動いているような、
かすかなシャリシャリという音だ。
 

気のせいかと思うが、少し不安を感じた。
「中に何かいるのかな…」
恐る恐る布団をめくってみた。



しかし、そこには何もなかった。
気のせいだったのか。
安心して、こたつのぬくもりを貪る。

みかんを食べようと手を伸ばした時、
また音が鳴った。

先ほどよりはっきり聞こえる。
まるで何かの生き物が、
こたつの中を這っているような…


 

Rさんは怖くなり、
部屋の灯りを明るくする。
 

そして、再びこたつの中を覗く。
しかし、こたつの中には何も見えない。
 

なんの音なんだろうか...
再びこたつに入る。
 

すると今度は、

何かが足に触れた。


 

それは、冷たく、
そしてヌルっとした感触。
 

Rさんは思わず悲鳴を上げた。
こたつから飛び出し、距離を取る。
 

すると、こたつの中からひと際大きく
「ぬちゃっ、ぬちゃっ」と
音が聞こえた。



そして、こたつ布団が
もぞもぞと動き出す。
 

Rさんは声にならない悲鳴を上げていた。
Rさんはもうパニックだ。
 

腰が抜けて立ち上がれない。
部屋の端にあるタンスに手をかけて、
ガタガタと震えている。



「何してんの?」
 

背後からの声で、
Rさんはまた悲鳴をあげた。
 

母だった。
半べそになりながら事情を説明する。
 

「なに馬鹿なこと言ってるの」
と母は言い、こたつ布団をまくり上げた。



「ひぃぃ」と悲鳴をあげるRさんを他所に、
そこには何もなかった。


ただ、布団がめくれる一瞬。
こたつの中に、

何か黒いものが動いたように見えた。
 

それ以来、
1人でこたつに入ることはなくなったそうだ。

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