深夜、会社の飲み会から帰宅するFさん。
酔っぱらいすぎて歩けない。

同僚にタクシーに押し込まれる形で帰宅となった。


意識がぼんやりしている。
窓の方をぼぉーっと眺める。
家に帰って、早く布団にはいりたい。



しばらく走ったところで、ふと気づく。
飲み会の場所から自宅まで
車で10分もかからない。


それが、もう30分以上走っている。



窓の外を見ると、
見知らぬ暗い道だった。
 

運転手は無言—
淡々とハンドルを握っている。


 

「ここはどこですか?」
 

Fさんが尋ねる。
運転手は「すぐ着きますよ」と答えた。


 

そういえば、目的地を言った記憶はない。
「どこへ向かってますか?」と聞いた。
 

「もうすぐ着きますよ」



今どこを走っているのか全く分からない。
携帯で位置を...と思ったが、電波がない。


窓の外は真っ黒な森。
絶対におかしい―



全身がぞわっとしてきた。
逃げ出す算段を考える。
 

すると、タクシーが停止した。
 

これはチャンスだ!
と思い、急いで飛び出した。


 

あたりは一面の真っ暗な森。
そして目の前にぽつんと廃墟があった。
 

運転手は

「お代は結構です」と言い、
タクシーは走り去って行った。


 

暗闇の中、一人残されたFさん。
携帯は相変わらず圏外だ。
 

現在地も見当もつかない。


このまま一晩
こんなところで過ごすのか…
 

しばらく呆然としていた。
 

そのころには
すっかり酔いも覚めていた。



すると、
先ほどのタクシーが戻ってきた。
 

「すみません。

 目的地を間違えていました。
     乗ってください。」


言いたいことは色々あったが、
この場にとどまるのは怖い。
 

すぐにタクシーに飛び乗った。


ほどなくして森を抜け、
見知った街並みが見えてきた。
 

いつの間にか電波が入る。
 

気が付くと、
Fさんの家の前に着いていた。


 

「お代は結構です」
タクシーは去っていった。
 

あれは何だったんだろう?
 

混乱していたが、安堵から急な眠気に襲われた。
Fさんは布団に倒れこみ、
そのまま眠りに落ちていった..

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