その夜は仕事が長引いてしまった。
 

仕事の帰り、

いつもと違う道で帰宅をしたKさん。
すこしでも早く家に帰って寝たかった。



その道は自宅への最短ルート。
だが、とても古い道だった。
 

車通りが少なく、道も細い。
なんとなく不気味で、
普段は通ることを避けていた。



トンネルの入り口に着く。
中は照明が少なく、
ハイビームで照らしていても薄暗かった。
 

時刻はすでに0時を少し回っていた



対向車はなく、
トンネル内はKさんの車だけ。
 

自然とアクセルを踏み込む。
ふと前方の、トンネルの壁が気になった。



車がその人影に近づく。
横目で壁を見ると……
ただのシミだった。
 

ほっとして、トンネルを抜けた。


帰宅してすぐにシャワーを浴び、
すぐに布団に入った。
 

だが、人影のことが頭から離れない。
その晩は中々寝付けなかった。


翌朝―
少し寝坊してしまった。
 

急いで出勤するため、
トンネルのある道を通った。


昨晩、シミを見た場所を通り過ぎる。
だが、そこにはシミなんてなかった…
 

その日も、仕事が遅くまで続いた。
すこし迷ったが、

またトンネルのある道を通ることにした。
 

Kさん以外、誰もいないトンネルを走る。
そして、例のシミの場所を通りすぎる時...


そこには、あきらかな人影があった。
いや、真っ黒な人影が
壁から浮き出ている。
 

―背筋が凍る


 

壁から這い出たものは、
全身が真っ黒。
顔も目も、真っ黒だった。


 

すべてが真っ黒なのに
なぜか『目があった』という感覚が
はっきりあった。



反射的にアクセルを踏みこむ。
急いでトンネルを抜ける。
 

その晩は自宅の布団で
ガタガタ震えて一晩すごした。


あれが何だったのかは分からない。

だが、Kさんはその夜以降、
二度とトンネルを使うことはなかった…

 

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