食べていると、思わず涙がぽろぽろと流れ出る、心と体の細胞が喜ぶ、そんなおいしいお米が食べたい。大切な人に食べて欲しい。

 2022年の9月、来年のお米栽培のための田んぼの候補地を見て回っていました。お山にある棚田、谷にある田んぼなど3か所ほどを見て回りましたが、どれも僕の心がときめく田んぼはありませんでした。結局その日は、栽培予定地を決めずに終わりました。後日、お山の谷にある田んぼにもう一度足を運んだところ、谷の一番上の所に草がボーボーに生い茂っている場所がありました。所謂「耕作放棄地」です。それも半端な耕作放棄地ではなく、6、7年放置された筋金入りの場所で、草がこれでもかと言わんばかりに生い茂っており、だれもその場所を借りようなんて変人はいません。ただ、僕という変態を除いては、、、。(笑)その場所を見た瞬間、ときめきと興奮で思わず坂駆け上りました。そして「ここでお米を栽培する!!」と決めました。なぜ、その場所を選んだのかというと、まず、耕作放棄地は宝の山だという事です。一般的に耕作放棄された場所は、草を生えっぱなしているため、「みっともない。」、「管理が行き届いてない。」と敬遠されがちですが、草が生えては枯れを繰り返していく中で、土壌の菌ちゃんが増え、自然界が土を豊かにしてくれている宝の場所です。また、慣行農法でお米を栽培していると下の岩盤層の所に腐敗層という層が出来ます。その腐敗層に稲の根が到達すると虫が来たり、病気になったりするという話を吉田さんから聞いていました。しかし、耕作放棄地では、草の根が腐敗層まで到達することで、腐敗層が取り除かれます。(実際にその耕作放棄地を掘ってみると腐敗層はありませんでした。)ありったけの草を土の中にすきこむ事で、さらに菌ちゃんいっぱいの土にして、腐敗層もない所でお米を栽培したいと思ったのです。また、その場所は、お山のきれいな湧水が入る最高の場所です。(美味しいお米を作るためには、水が大切です。)

 「ここでお米を栽培する!」と決めたものの、その田んぼの持ち主も分からないため、持ち主を探すところから始まりました。地区の田んぼに精通している方にお会いし、持ち主の家に伺い、その耕作放棄地を借りられることになりました。そこからハンマーナイフモアで草を粉砕する作業が始まりました。合計で3枚借りたわけですが、1枚目、2枚目と上に上がるにつれて、草の高さが高くなっていきました。3枚目の場所が凄まじい場所で、4~5m級のセイタカアワダチソウがそびえたっていて、モアが全く進みませんでした。そこで、草刈り機で刈ってからモアかける作戦に出ました。しかし、それでも草が重すぎて、思うように刈り取れません。腕も足もぱんぱんになりながら、なんとか終わりました。

 その後、何度かトラクターで耕運して、向かえた4月。耕作放棄地だったため、田んぼの畔も決壊してました。調べてみると道具を使って自力で畔を作る方法と機械で作る方法があり、機械はお金がかかるため、鍬で畔を作ってみました。土が重くて思うような畔になりません。しかも、畔を作る長さは、約300m。悟りました。「これは埒がアカン、、、。」と。どうしようかと途方に暮れていると、僕の住んでいる地区の方が畔塗り機を持っていることを思い出し、お願いして機械で畔を作ってもらいました。ものの数時間で、綺麗な畔が出来ていて、感動でわなわなと震えました。「田んぼらしくなってきた!」と喜んだのも束の間、今度は代掻きをするために水を入れないといけません。しかし、水の取り入れ口も分からないため、土に埋もれたパイプを見つけ出し、水を引きました。また、暗渠排水から水が漏れ出ていたので、目で見える範囲は蓋を買ってきてふさぎました。しかし、どこからか水があふれだしている音がしており、ジャングルの中を歩きながら、漏れ出ている箇所をふさぎました。すると次第に水が貯まりだしました。水が貯まった状態になってから代掻きをし、田植えの日を向かえました。耕作放棄地の時からずっと作りあげてきた田んぼなので、田植えの段階ですでに喜びで泣きそうでした。正直、「なんでここ借りたんやろか。綺麗に整備された田んぼ借りたらどんだけ楽やったやろか。」と何度も思いました。「これであってるんやろか。」と不安の中、手探りで一つ一つ進めていきました。それでも何とかやってきたのは、涙流すほどの美味しいお米が食べたい、食べて欲しい人がいるという思い一心でやってきました。一人物思いにふけっていると、田んぼの中に水の綺麗な所にしかいないとされるゲンゴロウがいました。頑張っている僕への神様からのギフトかなぁって、水中をさらによーく見てみると小さい草がびっしり生えているじゃありませんか!!なんじゃコリャーーー!!!!!!

さあて奇跡のお米は無事に収穫できるのでしょうか。

こうご期待です!   

 【百姓小僧 宮野雅文】


草がボーボーの耕作放棄地をハンマーナイフモアで開墾している様子

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