実践的な「読む」能力を養う日本語教育 | ヒャクゴウ、地球を駆け抜ける

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昨日は一つスウェーデン人のプライベートレッスンをしてから、
生け花のお稽古コスモスに行き、
さらに夜は津田ホールにて開催された
JALアカデミー主催の日本語教師のためのブラッシュアップコースに出席してきました。

昨日のテーマは

実践的な「読む」能力を養う日本語教育>

先生は大阪府立大学の野田尚史教授

受講して、日本語教師のコミュニケーション能力って素晴らしい
と思うことがありました。

まず、先生が教卓のところに立って授業をせず、
受講者に近い場所で、または受講者の席の間を歩きながら授業されていたこと。
さらに、双方向的な授業、ということで
受講者に質問を投げかけたりして、積極的な参加を呼び掛けられていました。

加えて、受講者も押し黙ることなく、
積極的に質問したりして、発言をしていました。

野田先生のユーモアのある授業、
そして、新しい発想による「読む授業」のご提案が、
非常に興味深く、あっという間の2時間でした目

日本語教師にとって「読む」授業とは、つまり読解のこと。
そして私たちは、語彙はもちろんですが、既習文型に注目して
学習者にとって、わからないところがないように
きっちり精読する授業をイメージするのですが、
今回のお話は、そういう「精読」ではなく
もっと学習者のニーズに合った読み物を
ストラテジーを使ってスキャニングして読んでいくための授業、あるいは教材開発というのがテーマとなっていました。

たとえば(授業内のレジュメから転用)
日本語がほぼゼロレベルの学習者でも、スタンプカードの内容が分かるには、
どうしたらいいのか、ということ。

300円につきスタンプを一個押させていただきます。
20個になりましたら、このカードと引き換えに600円値引きいたします。


こういう文章があったら、日本語教師はまず、何を教えるべきなのでしょうか。
繰り返しますが、相手はほぼゼロレベルです。

「円」「個」という単位を表す漢字ですね。

そうこれだけでもう十分なのです。
もちろん最初にスタンプカードがなんであるかは、説明します。

従来であれば、「~につき」「~になりましたら」「~させていただきます」「いたします」
といった文型に注目して教えてきたので、
ゼロレベルには無理だろう、という考えがあったと思います。

しかし、日本で生活する以上、
ゼロレベルでも、こういうものに触れるのですから

自分が中級になるのを待っていては、学習者にとっては遅すぎるのでは?

必要なことが分かればいい、という発想で
文型にとらわれず、
初級から生教材を使った「読む」練習をすべきだ
というのがお話の趣旨だったように思います。


つまり、学習者にとっては、
分からないものを残したまま、先に進むということです。
それには私も疑問があります。

しかし、これはあくまで「実践」のためだということを忘れてはなりません。

日本語学校の多くは、日本の大学や大学院、あるいは専門学校に進学したい就学生のためのカリキュラムが組まれています。
受験のため、あるいは文型の定着のために、
従来通りの精読も行われてしかるべきでしょう。


しかし、やはり授業の中に、こういった実践的な教材を取り入れることを
初級のうちから進めていくのも大事なのではないでしょうか。


お話を聞きながら、ふと考えたのが
今私が担当している初中級クラスの留学試験対策。
まだ中級の前半なのに、
あれだけ難しい留学試験の問題を解く、というのは
彼らにとって相当ハードなこと。

しかし、あれはただ試験ということだけではなく、
進学してからの彼らが触れるであろう内容なのです。
必要なことが分かるように
スキャニングのストラテジーを教えていく、というのは
今回のお話に共通しているな、と思いました。
(留学試験対策については、また今度)

講座終了後も、数名とあたかもゼミをしているかのように
質問や考えを交換することもできて、
とっても勉強になりました。

さっそく野田先生の本を購入したのは言うまでもありません。

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