【一席目】落語に出会ってしまった日のこと
一席お付き合いいただければと思います。好きなものとの出会いは、突然に起こります。雷に打たれる、穴に落ちる、なんて表現がされるように。30歳になって落ちた穴、それは「落語」でした2022年5月。ゴールデンウィークも真っ最中、何の予定もなくただ長い休みを持て余していた私の隣に、突然「落語」という世界が近づいてきて、手をひかれ、気づけば私は<浅草演芸ホール>の赤い席に座っておりました。※本当は、この出会いのきっかけがあまりに日常に潜んでいて、突然で、 まるで穴に落ちた、雷に打たれた、森で熊に出会った、、、そんな感じで とっても話したいのですがそれはまたいつの日か。お笑いは好きでしたが、ライブに行ったことはなく、ましてや「落語」なんて小難しい、理解できるかな、退屈しないかなという印象しかありませんでした。でもせっかく来たのだからと勇気を持って、演芸ホール前から3列目の真ん中に座ってみました。ちんちきちん、チントンシャンと、お囃子に乗って飄々と着物を着た男の人が出てくる。みんなの拍手に合わせる。お辞儀をする。もう一度拍手。想像していたのより、数倍距離が近くて驚く。よくコンサートや劇場で「目があった!」「こっちをみてくれた!」なんて会話があるが、そんなレベルじゃない。目は合う(気がする)、その上で、なんだか気持ちまで伝わってきそうな、以心伝心の距離。近さにドキドキしていると、枕と呼ばれる、お噺に入る前のおしゃべりが始まる。・・・わかる、日本語だ。と安心する。私にも分かる面白い軽快なおしゃべり。・・・・・・今度は気付いたら、江戸の世界にいた。口調も変わっているし、話の登場人物も「はっつぁん」「横町の御隠居さん」になっている。あれ、でも、話が分かる。ちゃんと面白い。怒涛に降り注ぐ江戸弁のシャワーが、めちゃくちゃ気持ち良い。脳の回線が、シナプスが、ピピっと震える感じがする。集中しつつ、笑いつつしている間に、あっという間に15分は終わり、江戸から来た着物の人は、また飄々と舞台そでに消えていく。落語、超おもしろい!!!!寄席は、噺家と、色物と呼ばれる漫才やピン芸、お三味線などの方も交えて緩急の中で進んでいく。私のいった日は、「真打」という最上級の階級になられた方のお披露目興行できっと普段の寄席よりさらにお祭りムードに包まれていた。気づけば、時間は21時手前。真ん中の席に座ってしまった&衝撃に楽しいものと出会ってしまった興奮とで4時間近く、席から動かずだった。自分の知らない世界に出会うってこんなに楽しいことだった・・・!雨に濡れた道路に反射する、ぼんやりオレンジのあかりに包まれた美しい浅草演芸ホールを見ながらいつまでもボーッと余韻に浸った。ちなみに、この私にとって記念すべき落語デビューの日は、NHK 72時間密着ドキュメンタリーの1日目でした。残念ながらインタビューはされなかったけれど、後日放送を観たら、緊張感漂う姿勢の良い私を客席の真ん中にバッチリ確認。・・・この日までは、よくある「落語」聴いてみたことがある!の体験談。この後の怒涛のはまり具合で、私は「隠れキリシタン」いや「隠れ落語ファン」にならざるを得なくなるのです。