いつの間にか桜が散っていた。


今日は休みだったが、人手が足りないと夕方まで仕込みを手伝う。その後に半端な時間になってしまったが中野通り南北に続く桜並木を歩いた。


が、


もう、桜並木ではなくなっていた。


今年の桜はすぐ散った。どこかのお姫様がいたずらに揺らしたように、ひらひらとすぐに散っていった。



毎年心待ちに楽しみにしていた桜もゆっくり見上げる事なく終わった。



もう7年目になる南北に広がる中野通りの桜並木。最初は満開で綺麗な薄紅色だったが今やもう東京色に染まった桜になってしまった。





そういえば南北といえば磁石だな。S極とN極、いわば南北である。


僕の理論だが磁石というのは恋人のようなもので、引っ付くときは引っ付くし、離れる時は離れる。


なぜかちょうど良いときが選べない。




なぜだか今日は離れた恋人を思い出す夜だった。



歩いても歩いても、緑色の桜並木が続いた。


とても淋しい夜だった。




どこかの誰かよ。今日も講読ありがとう。