普段から日本語を使用している私達にとって、「は」の濁音は「ば」、半濁音は「ぱ」であるというのは瞭然たる事実のように思われる。
しかし、ちょっと考えてみると、なぜ「は」行にのみ「半濁音」というカテゴリーが存在するのか、これまた釈然としない。
そこで、一見すると美しい日本語を、発音を基に分類し、それに基づいてこの問題に一定の答えを出してみたいと思う。
まず、濁音と清音の違いとは一体何か。
「か」と「が」を交互に発音してみると、「か」「が」共に口腔の中程で破裂しているのには変わりない。
しかし、明確な違いもある。
「か」では、発音開始の一瞬、音(所謂音程を持っているような音)が出ていない。より正確に言うと、声帯が振動していない。それに対し、「が」では、発音開始の時点で声帯は振動している。
ちなみに、韓国語・朝鮮語ではこの濁音と清音の区別をしない。「キムチ」も、発音する人によっては「ギムヂ」に聞こえたりする。
英語やフランス語などにおいても、区別をしないことがある。's'を「ス」とも「ズ」とも読んだり、'd'を「ト」とも「ド」とも読んだりする。
日本語にもその傾向がある。連濁がその良い例だ。
話が少し横道に逸れたが、清音・濁音の違いは先に述べた通りである。
それでは、行ごとに見ていこう。
あ行
単純に口を開ける。
か行
舌の奥を口蓋(口の上)につけ、破裂させる。
ただし、「き」は口蓋化する。(簡単に言うと、や行の口の形になる。)「きゃ」「きゅ」「きぇ」「きょ」も同様である。これらをきゃ行と呼んでもいいかもしれない。
さ行
舌の先を歯茎につけ、摩擦させる。
ただし、「しゃ」「し」「しゅ」「しぇ」「しょ」はか行同様に口蓋化する。これらをしゃ行と呼んでもいいかもしれない。
た行
舌の先を歯茎につけ、破裂させる。
ただし、「つ」ではそのあと摩擦が起こり、「ち」ではさらに「つぃ」が口蓋化している。
よって、同様につぁ行、ちゃ行と呼んでもいいかもしれない。
な行
舌の先を歯茎につけ、音を出し始めてから舌を離す。舌をつけている間は口が閉じているので、鼻から音が出る。これが鼻音である。
ここで、鼻音について補足しておく。
清音は、口から息が出る瞬間には声帯が震えない。
濁音は、口から息が出ると同時に声帯が震える。
鼻音は、口から息が出る前に声帯が震える。
要するに、清音、濁音、鼻音の違いとは、息が先、息と音が同時、音が先かという違いなのである。
先と同様、「にゃ」「に」「にゅ」「にぇ」「にょ」はにゃ行としておく。
は行
単純に口を開ける。しかし、発音の瞬間には声帯が振動しない。
お気付きだろうか。先ほどの定義(発音と同時に声帯が振動するか否か)に照らしてみると、は行の濁音はなんと、あ行となる。
…
と見ていくと、3つの法則が浮かび上がる。
①基本的にどの行も、い段の音のみ口蓋化して「○ゃ」「○」「○ゅ」「○ぇ」「○ょ」(○にはい段が入る)という別の段が存在する。
②破裂音は、舌を歯茎や口蓋に付けることで、口から息が出ない状態を作るので、鼻音が存在する。
③発音と同時に声帯を震わせるのが濁音であり、声帯の振動が先なら鼻音、発音が先なら清音となる。
これに基づいて並べてみる。
⚫︎開口
摩擦 は←あ
破裂 か←が→か゚
強擦 ヒャ←や
⇅ ⇅
破擦 キャ←ギャ
⚫︎歯茎
摩擦 さ←ざ
⇅ ⇅
破裂 た←だ→な
⚫︎唇
摩擦 ファ←わ
⇅ ⇅
破裂 ぱ←ば→ま