出典: http://www.judaspriest.com/

Heroes End (Judas Priest のアルバム「Stained Class」より)
作詞: Glenn Tipton

 

"I heard a human voice who sang like no one else"
 すばらしい歌声が聞こえた

"I heard a proud lady singing loud"
 それは気高き女性の歌声

"Lived her life as she liked, didn't give a damn"
 自分の人生に誇りを持った女性だった

"But soon she found she was underground and wasted"

 しかし彼女はもう売れない歌手になってしまったことに気づいたんだ


"I watched her hitting notes as she strutted stage"
 まるでステージ上にいるかの様な歌声

"Her body shook oh, she did her stuff"
 全身全霊で歌っていた

"She screamed and quake, give and take, maybe took too much"

 たしかに頑張ったが彼女はあまりにも成功し過ぎてしまったんだ

"If you take the smooth you gotta take the rough"

 安寧を得たいのなら、つらい時期も必要だと理解しなきゃいけない


(コーラス)

"Why do you have to die to be a hero"
 なぜ英雄でいるために終わりにしなきゃいけないのか

"It's a shame a legend begins at its end"
 引退した後に伝説になっても意味がないのに

"Why do you have to die if you're a hero"
 なぜ英雄は絶頂期に終わりにしなきゃいけないのか

"When there's still so many things to say unsaid"

 まだやる事がたくさんあるのに

 

"I heard a man's guitar electrify a crowd"
 人々を感動させるギターが聞こえた

"I felt the sound shower round"
 まるでギターから何かが出ているようだ

"And he would take you with him where no music's been before"
 お前は非日常の世界に連れて行かれ

"As you merged the power surge together"

 バンドとの一体感が感じられるんだ

 

"His music knew no limits if you were in it's wake"
 もしこのバンドを知っていたら、彼らの無限の可能性に気づいただろう

"You had no choice, no, but hear its voice"
 他の音楽なんて眼中に入らないだろう

"And you would listen hypnotized, and in a dream"
 本当に魅力的だったんだ

"But once so strong survive or become weak"
 だが今は英雄が衰えたまま生き残る時代なんだ

 

(コーラス)

"Why do you have to die to be a hero"
 なぜ英雄でいるために終わりにしなきゃいけないのか

"It's a shame a legend begins at its end"
 引退した後に伝説になっても意味がないのに

"Why do you have to die if you're a hero"
 なぜ英雄は絶頂期に終わりにしなきゃいけないのか

"When there's still so many things to say unsaid"

 まだやる事がたくさんあるのに

 

"If you gaze across timeless years you'll find them always there"
 長い視点で見れば、一時の輝きであっても彼らの価値は揺るがない

"And many gods will join the list compiled with dying care"
 栄えていた英雄たちも、いつかは衰えていくのだ

"Hungry mouths are waiting to bite the hand that feeds"
 人々は次の作品を期待する

"And so the living dead carry on immortal deeds"

 だから英雄たちは衰えようとも進まねばならないのだ


"I saw on silver screen an actor's rise to fame"
 映画で輝いている俳優を見た

"But fast car user lose"
 だが彼はあっという間に売れなくなって辞めちまった

"That legend's born from death and that is such a shame"
 その後に彼の名は伝説となって残ったが、そこに意味などはない

"'cos every year new ones appear"

 なぜなら英雄は次々と生まれてくるのだから

 

(コーラス)

"Why do you have to die to be a hero"
 なぜ英雄でいるために終わりにしなきゃいけないのか

"It's a shame a legend begins at its end"
 引退した後に伝説になっても意味がないのに

"Why do you have to die if you're a hero"
 なぜ英雄は絶頂期に終わりにしなきゃいけないのか

"When there's still so many things to say unsaid"

 まだやる事がたくさんあるのに

 

 

プロサッカー選手の三浦知良 (みうらかずよし、カズ) 選手は、2020年で53歳ですが未だにプロとしてJ1という日本の最高峰でプレーしています。

称賛の声がある一方で、「集客効果があるだけでプレーはプロに値しないから引退するべきだ」という批判の声もあります。

三浦選手がもっと早く引退していたら、現在の批判の声がない状態で日本サッカー界の伝説となれたでしょう。

しかし、この曲「Heroes End」がジューダスプリーストからの「引退するな」という答えなのかもしれません。

 

このHeroes End は、非常に特徴的でプリーストらしいギターのリフがすばらしい、「Stained Class」収録の最後の曲です。このアルバムでは他にも人気曲がいくつかありますが、私はこの曲が一番好きです。
 
しかし、この曲の歌詞は解釈が難しく、人によって捉え方が大きく異なるのではないでしょうか。
この四枚目のアルバムが発表されたのは1978年で、ボーカルのロブが26歳 作詞をしたグレンが30歳の時です。
ですが、この歌詞の内容は、まるで2020年現在のジューダスプリーストの心境を歌っているかのようです。
つまりこの曲は、英雄の死ではなく、英雄の引退を「end」 とか 「die」と言っていて、ある一つのことに打ち込んだ英雄の晩年期について歌っていて、衰えながらも続けることに意味があり、引退して終わりにしたら意味がない、と歌っていると思うのです。
 
さて、歌詞で最初に出てくるのは女性の歌手、次はバンド、最後は俳優ですね。
最初の女性についてですが、「take the rough with the smooth (良いことだけでなく悪いことも受け入れなければならない)」 と言うことわざを使った歌詞がコーラスの直前に出てきます。
「If you take the smooth (もし良いことを得るのなら)」と、「you gotta take the rough (悪いことも得ないといけない)」ですね。
そして、その直前に「give and take, maybe took too much (ギブアンドテイクといわれてるのに、彼女はたぶんもらい過ぎていた)」と歌っているので、もらい過ぎなほどの成功の後に売れなくなってしまった現在の女性に対して、「まだ熱意があるし歌うことが色々あるのだから、悪い時期だと落ち込んではいけないし、輝かしい英雄として名を残すために引退して終わりにしてはいけない」と言ってると解釈しました。
 
二番のバンドについては、ギターやボーカルの素晴らしさを歌っているのですが、これまたコーラス直前に「But once so strong survive or become weak」 という、この曲が訴えたいだろう歌詞が出てきます。
ここの部分の意訳も難しいのですが、「but once」 は 「しかし昔のことで、今は違う」 と考え、昔というのは「強者が、生き残るか弱者になるかという二者択一の世界」だったということで、今は二者択一ではなく両方だと、つまり弱者になったまま生き残るという意味だと解釈しました。
 
結局、言いたいことは、英雄は引退するその時まで輝かしい英雄である必要はなく、衰えながらも続けていくべきだ、と言っている気がします。
ジューダスプリーストに当てはめれば、2011年にすばらしいギターの片方であるK・K・ダウニングが脱退しバンドの魅力が衰え、2014年発表のRedeemer of Soulsと2018年発表のFirepowerは微妙な出来のアルバムで、2018年にもうひとりのギターのグレン・ティプトンが活動停止し、さらにボーカルのロブは流石に衰えてきている。
一方でファンは、プリーストという英雄にメタルをやり続けてほしいと思っている。
腹をすかせたファンたち (Hungry mouths) が待っているから、衰えたプリースト (the living dead) は質が低くなっても続けるんだ、ということなのではないでしょうか。
輝かしい英雄として名を残すために、なぜ引退する必要があるのか、というのがコーラス「Why do you have to die to be a hero」の意味だと私は受け取りました。
 
 
最後にすごく余談なのですが、ジューダスプリーストの曲についてアメリカで裁判になって無実が証明されたのは、三曲目の「Better by You, Better than Me」という Spooky Tooth のカバー曲で、この九曲目「Heroes End」ではありません。
一部の人がこの曲だと勘違いしてしまっているようですが、Yahoo Music の https://www.yahoo.com/entertainment/one-of-the-strangest-yet-most-well-known-court-127465861446.html など、いろいろな記事に書かれているので誤解しないようにしましょう。
アメリカの若者が自殺をしたことは不幸なことで同情しますが、それを「Better by You, Better than Me」の実在しないサブリミナル効果のせいだと訴えたのは行き過ぎであったと思います。余談でした。