OSS(オープンソースソフトウェア)に対置されるクローズドなソフトウェア(一般にプロプライエタリ{proprietary:専売特許の}ソフトと呼ぶらしい)は、
OSS側からしばしば"魔法"に例えられる。


<ウェールズの神話では、女神セリドウェンはすばらしいおなべを持っていて、それは滋養あふれる食べ物を魔法で産み出してくれる ―― ただし女神だけが知っている呪文を唱えれば。>
http://cruel.org/freeware/magicpot.html


<まず、彼は「魔法の食物」について語った。必要な栄養素がすべて含まれ、1年間食べると栄養満点になるという架空の物質だ。最初の1年はたったの1ドルだが、これを食べ続けた身体はそれ以後ほかの食物を毒として受け付けなくなるという。「次の年にはこの魔法の食物が値上がりするのが分かりますか?」とウィラー氏は尋ねた。「わたしが言いたいのはMicrosoftやRed Hatのことだと皆さんは思うでしょう。でも違うのです。サプライヤーは必要です。問題は、依存してしまうことにあるのです」と説明した。>
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0604/11/news049.html


しかし、私達の多くは普通の感覚として、マイクロソフトに代表されるプロプライエタリソフトのベンダは「まっとう」な商売を行っているだけで、
むしろLinuxのような複雑で大規模なOSSが、タダで出来上がってしまっていることこそ"魔法"に思えるのではないだろうか。


そのカラクリは、エリック・レイモンドの『伽藍とバザール』(http://cruel.org/freeware/cathedral.html )や『ノウアスフィアの開墾』(http://cruel.org/freeware/noosphere.html )や巷にあふれるOSS関連書籍に詳しいが、いずれにせよ事実として現在私達は、OSSがもたらす高品質、高信頼性、低コスト、豊富な選択肢を享受している。
OSSの"魔法"の実効性には、脅威を感じこそすれ、疑問を差し挟む余地は今や全くない。


では、私達ソフトウェアベンダはどうすればいいのか。


<オープンソースと言うときに、単にLinux等のオープンソースを上手に利用することだけを考える方も多いでしょう。しかし、それでは不十分です。オープンソースという言葉を、「オープンソースとして公開する」とか、「公開型でシステム開発をする」と言う意味に使いたいのです。オープンソースを作り出そうとして、初めて「オープンソース」していると言えるのです。>
『オープンソースじゃなきゃ駄目』-湯澤 一比古 (著)


OSSの供給側に回ったとき、それは「まっとう」な商売として成り立つだろうか。

-主体的に(幾分かコストを払っても)OSSの波に乗るべきか?しかも、どういうやり方で?-
そして、OSSの流れを無視、もしくは傍から眺めているだけのソフトウェアベンダはどうなるのか。

-いずれ淘汰の波に飲まれてしまうのか?-


これらの答えを、前出のエリック・レイモンドの最新(といっても1999年のもの)の論文『魔法のお鍋』が示すオープンソースのビジネスモデル群を起点として探っていきたい。


そのビジネスモデルには以下のようなものがある。


・ロスリーダー・市場ポジション確保(Loss-Leader/Market Positioner)
-オープンソースのクライアントソフトをばらまいて、サーバソフトが売れるようにするとか、ポータルサイトと関連した購読・宣伝収入を得るとかいう例


・刺身のツマ(Widget Frosting)
-オープンソースの「将来に不安がない」効果を狙ったもの


・レシピをまいて、レストランを開け(Give Away the Recipe, Open A Restaurant)
-Red Hat をはじめとする Linux ディストリビュータがやっていること


・アクセサリー(Accessorizing )
-いちばん低いところでは、コーヒーカップやTシャツ。ハイエンドでは、質の高い編集と製本でのドキュメンテーション


・未来をフリーに、現在を売れ(Free the Future, Sell the Present)
-クローズドなライセンスでバイナリとソースをリリースするけれど、そのライセンスに期限をつける


・ソフトをフリーに、ブランドを売れ(Free the Software, Sell the Brand)
-互換性があるという証明ブランドを発行


・ソフトをフリーに、コンテンツを売れ(Free the Software, Sell the Content)
-ソフトはすべてオープンソース化して、コンテンツの購読を売る


次回へつづく。