え…何かあったんですか?

不安げな表情の姉、
困った表情のスタッフさん、
怒ったように見える家主の娘さん。

さすがに、この狭い脱衣所でこれから打ち合わせが始まるとは思えなった。

家主の娘さんが、重たい口を開いて話してくれた。

コンサートが始まった頃…
奥の部屋からSくんがなかなか出てこないことを、娘さんが不思議に思い、様子を見に行ったそう。

すると…

置いてあった奥様のかばんの中を開き、お財布を手にしていたSくんの姿があったという。

え…

怖くて声が出せず、しばらくそのまま様子を見ていたら、今度は椅子に寄りかかりウトウトされていたおじい様の、すぐ真隣りにあったかばんを開けて物色していた、というのだ。

恐ろしくて立ちすくんでいた娘さんにSくんが気づき、手を放してリビングのコンサートに向かったという。

また、コンサートが終わって大きな声で彼を怒ったのは次女さんのようで。

お姉さんからこの話を聞いていたから、彼の動きに注意をはらいながらお皿を洗っていたら、後ろにあったかばんを開けていたと言うのだ。

次女さん曰く、彼は「眼鏡が落ちそうだったから」と言ったらしいが…
いくらそうでも、そうそう人のかばんの中身に触るものではないガーン

「何も取られてはいないと思うんだけど、あまりにもお連れの方の様子がおかし過ぎて…。

お姉さんにお声がけしたら、冬さんのお連れの方だ、っておっしゃるので、一応お耳に入れておこうと思ってお話ししました。」

姉が、
…念のため私も財布見てこようかな。。。
玄関にファスナーもないトートバッグに、そのまま入れてあるし…

と荷物置き場に戻っていった。

え、一体何が起きているの…?
彼があちこちで他人のかばんを物色していた…?

混乱してはいたが、ひとまず連れが迷惑をかけていることをその場で謝罪した。

何かあったら、また教えてください、と言葉を残し、姉は玄関の荷物を確認しに。私は、彼のいるリビングに戻ることにした。

気持ちは何故か、、、「無」だった。