この日のセックスは、優しくて長かった。
傷つけてしまった私の気持ちを、彼がいたわってくれてるみたい。
暗がりの中でのセックスは、余計なことを考えずに没頭できたから、逆に良かった。
終わったあとも、彼は必ず私を腕に抱く。
もちろん、この日もそう。
私はというと、午後から楽器のリハーサル。
買い物をしてから夜に彼の家へ。
2時間映画を観たあとの、長いセックス。
体は疲れてる。けど、アドレナリンが出過ぎていてまったく眠れる感じがしない。
眠剤を持ってくるんだった…
この日は心からそう思った。
眠れない時間に考えるのは、さっきのこと。
私はきっとこれから、彼に送ったLINEに既読がつかないと、ほかの女の子とLINEしてるのかな…
と100%思うだろう。
熟睡してる彼の横顔を眺めながら、
彼の嫌なところを数えてみる。
顔なんて、全然タイプじゃない。
背だって高いわけじゃない。
お金をたくさん持ってたって、私に使うわけじゃない。
そもそもお金を持ってるから、彼と付き合ってるわけじゃない。
趣味だって合わない。
いつも彼の趣味に付き合わされて映画やYouTubeを観るけど、全然興味がないものだってある。
人たらしゆえ?交友関係は浅く広そう。
男も女も関係なく、初対面でLINEを交換する。
私も、趣味で共通点があったり、共演したり、聴きに行ったコンサートで感想が盛り上がって初対面でそのままお茶したりすることがある。
FBで出会ったその日に繋がったりする。男女関係なく。
あれ?彼も一緒?
いや、不定期更新のFBでの付き合いと、
LINEとじゃ意味が全然ちがう。
まあ彼は投稿系のSNSは見る専門で、やってないのだけど…
とにかく、全然合わない。
タイプじゃない。
タトゥーとかあるし。
仕事もお金の価値観も。
生きてる生活圏が違うじゃん。
冷めていいんじゃん?
不誠実なことをされてる。
これからもっと嫌な思いや、不安な思いをするかもしれない。
何より、旦那さんと経験したあんなに酷い日々。
同じ思いをするなんて真っ平だ。
私はそんな思いをしたくなくて、シングルマザーになる、という道を選んだんだ。
これから一緒に過ごす男性は、安心させてくれる人じゃないと嫌だ。
女性関係に不安を抱えて過ごすなんて、もう絶対嫌。
私は女性として尊重して扱ってもらう権利がある。ぞんざいに扱われるなんて、金輪際お断りだ。
Tくんから貰った言葉を思い出す。
冬が俺を好きな気持ちより、俺の方が好き。
付き合ってる女が自分のために綺麗になっていって、周りの人にもそれが伝わるなんて、嬉しいに決まってるじゃん。
今日、あの場にいた女の子の中で、冬が一番可愛い。
冬の嫌いなところ?そんなのないよ。もう越えちゃってる。
俺と冬は長く続けられるよ、愛してるから。
「うっ。。。」
涙が溢れる。声を押し殺す。
全然タイプじゃない、
生きてる世界が違う、
でもほかの誰と過ごすより、彼との時間が楽しくてワクワクして、嬉しくて、満たされて…
彼が好きで仕方ない
苦しい
そんなことを考えていたら、夜が明けていた。