「タクヤ君も来たの!?」
「うん。可愛かったよ」
「タクヤ君のパパとかママは?」
「いないよ」
…キタ。
いくら普段預けてるとはいえ、「親戚」に託して赤ちゃんを旅行に行かせるはずがない。
(間違いない。ケンジの子だ…)
うちの子供達の、腹違いの弟、ということになる。
(ドラマみたいだな…)
もうすぐ1歳になるタクヤ君。計算上だと私と離婚してすぐ、再婚したことになる。
嫉妬心などはなく、「呆れた」という気持ちが強かった。
にしても、再婚相手の今妻さんは、ケンジが慰謝料や養育費を抱えてることを知っていたのだろうか。
離婚の理由が彼の度重なる不貞行為、ということは知っているのだろうか。
ケンジほど、「一夫一妻制」に、日本の結婚という制度に当てはまらない人はいない。
離婚間際、「オレはセックス依存症なんだと思う」と話していたケンジ。
病院を受診するか、外国の一夫多妻制の国に行くかしかない。
自由恋愛を楽しみたいなら、一生結婚という制度に縛られず過ごせばいい。
その方が、世の不幸な女性をこれ以上増やさずに済むのに…
と、ひとごとのようにぼんやり考えていた。