pleine lune(満月) | Angel Tears

 

【優しい音色】

 

 

 

人間というのは何のために戦うのだろう。

 

 

過去の戦いを振り返ってみても、

土地や食糧を巡る戦いもあれば、

天下を取りたいという野望が理由の戦いもある。

その場合、ほんの僅かな人間が権力や栄光を

手に入れるだけで、配下にある者や力無き民は、

戦の度に翻弄され、最悪の場合は命を落とす。

だと言うのに、どの時代も争いは無くならない。

 

人に限らず命を持った生物というのは、

本能で戦うように出来ているのだろうか……

 

この一見平和に見える“現代”でさえ、

武器を片手に戦地を走り、

そればかりか戦略的な目的のために

大量破壊兵器の一つである『核兵器』を

保持する国も少なくない。

 

本来いるべき時代で、軍師として戦いに

身を投じていた己がこんな事を考えるのも

変な話だと思うが、平和に慣れていない所為か

自分は愛しい人と幸せを望んで良いのだろうかと

時々考えてしまう事がある。

それを一度口にした時、

 

「良いに決まっています。

幸せになったらいけない人なんていないんだから」

 

彼女は真っすぐにこちらを見てそう言った。

 

僕が迷った時にいつも欲しい言葉をくれる。

 

 

 

待ち合わせをしている寺の茶屋で、

読みかけの本を閉じて庭に目を向けると

太陽の陽射しを受けながら、

柔らかな風に揺れる女郎花が輝いていた。

 

(綺麗だな…)

 

 

 

 

戦いに明け暮れていたあの頃、

花々に目を向ける余裕などなかった。

軍師であり薬師でもあった自分は、

樹木や花は薬になるという目線でしか

捉えていなかったから、今こうして身近にある

花に目を向けて、それらが美しいと思えるように

なった自分が、『随分と人間らしくなった』と思う。

 

その時、低い山の方から鳥の鳴き声が聞こえてきた。

反射的に見上げた空は青く澄んでいて、

鳶が翼を大きく広げて周回していた。

 

鳶の高い鳴き声は、敦盛が吹く龍笛「小枝」の

美しい音色に何処か似ていると思った。

目を瞑って記憶を辿り、敦盛が陣地でよく奏でていた

曲を脳裏に思い浮かべていると、

 

「何をしているんですか?」

 

と声を掛けられた。

その声はよく知っている声で、

自分の一番大切な人だ。

 

「望美さん」

 

「遅くなってごめんなさい」

 

「たいして待っていませんから、気にしないで下さい」

 

店員に声をかけて彼女の抹茶と和菓子を注文する。

 

「目を瞑っていたみたいですけど、

やっぱり待ち疲れたんじゃないんですか?」

 

「いいえ、違いますよ。

敦盛君の笛の音を思い出していたんです」

 

「演奏上手でしたよね。

私古典的な曲はよく判らないけど、

敦盛さんの笛、とても好きでした」

 

会話をしている間に、抹茶と上菓子が運ばれてくる。

 

「おや、ここで他の人間に対して“好き”という言葉を

耳にするのは何だか妬けますね」

 

からかうように言ってみるが、

そう言った言葉に耐性が出来たのか、

それともあえてスルーしたのかは不明だが、

 

「そう言えば源氏の中で他に楽器を使う人って

いませんでしたよね。

弁慶さんは何かやったことはないんですか?」

 

と、思ってもみなかったを聞かれた。

 

「残念ながら、楽とは縁はなかったですね。

ああ…これでも延暦寺では僧兵でしたから、

一応法螺貝には少しばかり触れましたが……」

 

「法螺貝って、大きな巻貝のアレですよね」

 

「多分、君が想像している物で合っていると思います」

 

「弁慶さんが法螺貝……」

 

そう呟きながら、彼女は後ろを向いて肩を震わせる。

 

「望美さん?」

 

「ごめんなさい。でも弁慶さんが法螺貝を吹く姿を

想像したら、何だか可笑しくなっちゃって」

 

「そんなに変ですか?」

 

「変と言うよりも、似合わないって言うか……

あーいうのは、身体もごつくて声もいかにも野太い

感じのおじさんが吹くイメージがあるから」

 

確かに自分は見た目も筋肉質ではないし、

声もどちらかと言えば柔らかくて

会話も穏やかだと言われる。

 

「では僕にはどんな楽器が合うと思いますか?」

 

「えっ、何だろう」

 

顎を左手で支えて考え始めたが、

すぐに何かを思いついたようだ。

 

「あっ」

 

「何かありましたか?」

 

「弁慶さんに合う楽器と言うよりも、

弁慶さんの優しい声は、柔らかい音色のようです。

傍で聞くと心地よくなります」

 

「……それは『有難うございます』と

お礼を言わなくてはいけませんね」

 

想像していなかった返答に些か動揺するが

元軍師たる者、ここは上手く隠さなければならない。

だからそれを誤魔化すように冷静に囁いた。

 

 

 

 

「では、今夜は耳元で囁きましょうか。

愛の睦言を…ね」

 

 

誰かを恋しく思う。

 

それもまた人間の本能―――

 

 

 

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いきなり駄文から載せちゃいました_| ̄|○

月が先でも良かったんですけどね。

でも思いつくまま書き始めちゃったからw

後先考えなかったのよね。

 

今日お誕生日のNさんへお祝い代わりに

パッと思いつくまま書いたんですが、

(いや、お祝いにもならんでしょう…こんな駄文)

この1~2年は何も書いていなかったから、

話が纏まらないというか、言葉の軸がブレてヤバい。

 

何でこの話を書いたかというと、

法螺貝を持った某弁慶を自分が想像して

あまりにも可笑しかったからです(`・ω・´)

やっぱり法螺貝は野伏のような装いの人が

吹くのが一番しっくりいく。

ああ、別ゲームにカーカッカッカと笑う山伏もいますねw

彼なら法螺貝は手慣れたものでしょう。

 

Nちゃん、お誕生日おめでとう~

 

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今日のブログタイトルpleine luneは

フランス語の【満月】です。

 

 

 

日中は曇り続きが多いですが、

我が家の方でも今夜は月が綺麗に見えました。

今年の9/10は中秋の名月と満月が同じ日になり、

ラッキーなんだそうですね。

日付も変わりましたが、もう見ましたか?

私は9/10の午後20時半頃に見ました。

 

 

9/11は二百二十日で収穫の時期にあたりますね。

農家さんにとって大事な時期です。

台風12号が大きな災いになりませんように……

(11日は全国的に晴れか曇りの場所が多いようですが)