中国江蘇省蘇州市で6月下旬、スクールバスを待っていた日本人母子ら3人が中国人の男に襲われた事件は、男を制止しようとして刺された中国人女性の胡友平さん(54)が亡くなる悲劇となりました。

 

我身を犠牲にして、国籍を問わず子供たちを守ろうとした胡さんに、心からの敬意と哀悼の意を表します。

 

 在中国日本大使館と在上海総領事館も胡さんの死を悼み、反旗を掲げました。中国でも「永遠に忘れない」など、追慕の言葉が連なり、日中の国境を超えて、胡さんへの思いを多くの人々が共有しています。

 

 しかし一方で、中国のSNSでは、事件を巡って口さがない書き込みも広がりました

。犯人の凶行を「賛美」するものもあれば、胡さんを中傷するものまでありました。

 

関係者によりますと、遺族は弔問や寄付金などを拒み、「そっとしておいてほしい」と強く希望しているといいます。微妙な日中関係が悪質な書き込みに影響している可能性もあり、日中のはざまで巻き込まれたくない思いがあるのかもしれません。

 

 中国の複数のSNS大手は事件後、「中日対立や極端な民族主義感情を扇動」する内容について一斉に規制に乗り出し、検索大手・百度は6月30日、計330件の書き込みを規制したと公表しました。社会の安定を重視する習近平政権の意向が働いたのは間違いないのです。

 

 北京の知識人はこうした反日の書き込みについて、「一種の『指桑罵槐』だ」と説明します。指桑罵槐は「桑を指して槐を罵る」という故事成語で、あるものを非難しているようで、別のものを非難することを意味することだといいます。

 

「景気が悪い、不満をぶつけたい、だが政府批判は出来ないから日本を批判しよう。こういう発想の人間が反日を書き込む」と解説します。対日批判をしつつ、真の不満の矛先は政府にあるというのです。

 

 新型コロナウイルス禍を機に、中国のネット空間では反日が強まっているとの見方が強く、景気が悪化し、行動も規制されるなか、体制への不満のはけ口が日本になっている構図なのです。

 

 反日の歴史は、政権批判の歴史だといいます。2010年の中国漁船衝突事件を機に起きた反日デモも、一部で「多党制推進」などが掲げられ、一党支配体制への批判に転化しています。

 

反日的な愛国主義教育の影響も残り、一度火が付いた反日は制御できなくなり、政権自身に跳ね返るリスクを抱えているのです。

 

 経済が減速し、社会に閉塞感が漂う中、習政権は適度な反日は許容できても、極度な反日は許容できなくなっているのが実情なのです。SNSでの言論統制は、在留日本人の安全確保のためというよりも、体制の安定を守るための措置にほかならないのです。

 

< 改正反スパイ法の新たな施行と共に、中国国内の人々の不満が更に蓄積されていくと思うと、中国にはとても行く気になりませんね。

 

中国が、フィリピン相手に対立を更に深め、国民の目をそこに逸らすことが懸念されます。>