太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河が、昨年来の干ばつによる水不足で通航制限が続いており、別の水域の川に貯水ダムを建設して水を引く計画が上がっています。

 

 4月28日、太平洋側にあるミラフローレス水門の鉄製のゲートが開き、日本に向かう貨物を載せた大型コンテナ船がゆっくりと運河を通り抜けていき、作業員の男性は、「ようやく通常に近い状態に戻ってきた」と顔をほころばせたといいます。

 

パナマでは昨年上半期の降雨量が観測史上最も少なく、深刻な水不足に見舞われ、政府は昨年7月、運河の1日の通行枠を通常の35~36隻から制限すると発表しました。

 

水不足で通航に必要な水を確保できないためで、枠は12月に1日22隻にまで絞られ、一部の船会社はコンテナを陸路で輸送したといいます。

 

 今年は4月に十分な降雨があり、危機的状況は回避されましたが、今も1日27隻の制限が続いており、パナマ運河庁は、運河の西にあるインディオ川に貯水ダムを建設し、水を引く計画が唯一の解決策になるといっています。

 

ただ、貯水ダムの建設には約20億㌦(約3000億円)の投資が必要で、完成には4~5年かかり、移転を迫られる流域住民約2000人への補償も必要になります。

 

また、住民は建設に反対しており、インディオ川近くで40年暮らしている農家のマリア・マルティネスさん(56)は「今の暮らしがなくなるなんて想像できない」と訴えています。

 

 しかし、パナマ運河はパナマの主要産業で、通行料などの収入は国内総生産(GDP)の3%に上っているのです。

 

今月5日に行われた大統領選で当選された、ホセ・ラウル・ムリーノ元治安相の陣営は読売新聞の取材に対し、「運河庁の技術者の調査に基づく決定を支持する」と回答しています。

 

< 日本は米国、中国に次ぐ世界で3番目の運河の利用国。スエズ運河同様、日本にとっては大切な輸出入の航路なのです。>