南アフリカで初の全人種参加選挙が1994年に実施されてから先月27日で30年を迎えました。市民はアパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃されて自由になった喜びを回願しつつ、生活苦が変わらないことへの失望も感じています。

 

 首都プレトリアで27日に開かれた記念式典でシリル・ラマポーザ大統領が演説され「全人種が団結して今日ここに集まっている。人種間の和解のために尽くしてきた。30年の短期間での進歩を誇るべきだ。人種の壁を打ち破り、社会に多様性をもたらした」と強調されました。

 

 アパレルヘイトは1940年代から90年代まで続きました。白人政権が人種別に居住地を定め、出生時の人種別登録を義務づけ、異人種間の結婚を禁じていました。

 

ネルソン・マンデラ氏が指導した運動で91年から関連法が順次撤廃され、94年4月27日の全人種参加選挙をもって完全撤廃されました。南アフリカは4月27日を「自由の日」に定め、祝日にしています。

 

 式典に参加したイフラン・モラバさん(65)は、30年前の投票を昨日のことのように覚えているといいます。「我々は自由の目撃者だ」と語り、当時を回想します。

 

待ちきれず、早起きして投票所に着くと既に長蛇の列ができていて3時間並びました。投票用紙には字が読めない人にもわかるように、マンデラ氏の写真が印刷されていました。

 

 政府はアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)で黒人優遇政策を進めましたが、人種間の経済的不平等は依然として大きく、人口の約7%の白人が経営者の約6割を占め、黒人の失業率は白人より約30㌽高いのです。

 

ラマポーザ氏の演説中には「苦悩の35年」と書かれた看板を掲げ、「自由なんかないじゃない」と叫び続ける参加者が会場から追い出される一幕がありました。

 

 5月29日に行われる5年に1度の国民議会(下院、定数400)総選挙では、アパルトヘイトと戦った与党アフリカ民族会議(ANC)が、初めて過半数割れする公算が大きいのです。

 

アルフィエス・ラホウさん(84)は「生活の苦しさは変わっていないが、民主主義のありがたみは若者に伝えていかないといけないだろう」と話すのです。

 

< 「苦悩の30年」ではなく「苦悩の35年」とは、全人種参加選挙が実施されても、何も変わらないということを訴えているのですね。>