鎌倉時代を代表する歌人、藤原定家が記した古今和歌集の注釈書「顕注密勘」の原本が、定家の流れをくむ冷泉家で見つかったと公益財団法人「冷泉家時雨亭文庫」が18日、発表しました。写本が重要文化財に指定されていますが、直筆書が確認されたのは初めてです。

 

直筆書は冷泉家が蔵で保管していた「古今伝授箱」に入っており、「定家様」と呼ばれる特徴的な字体で書かれ、ペンネームとして用いた「八座沈老」の文字や花押などもあり、定家直筆と判断できたといいます。

 

 冷泉家は、定家のまごにあたる為相(鎌倉後期)を初代とする歌道宗家で、代々朝廷に仕え、将軍家の歌道の指導にもあたっており、定家は新古今和歌集の選者として知られます。

 

今回見つかった定家直筆の顕注密勘は、冷泉家の当主が受け継いできた「古今伝授箱」と呼ばれる木箱に収められていました。

 

平安末期~鎌倉初期の僧・顕昭の注釈に付け加える形で構成され、顕昭と考えが同じ間合いは「一同」などと簡易な記述ですが、異なる場合は余白に書き切れず、色紙を貼って書き足した部分もありました。

 

 顕注密勘が入っていた古今伝授箱は、数万点の史料が収められている冷泉家の蔵で保管され、代々の当主が一生に一度だけ開き、中の書物を書き写して歌学の修練に励み、成果を後世に伝えてきたといいます。

 

経緯は定かではありませんが、明治期の130年前を最後に開かれず、「恐れ多いもの」として守られてきました。冷泉家で1980年から進められてきた調査の一環で2022年に開封され、顕注密勘のほかに、冊子59冊と古文書58点も見つかりました。

 

 久保田淳・東京大名誉教授(和歌文学)は「直筆書には、定家の推敲の跡も生々しく残っており、国宝級の発見と言える」と話され、小林一彦・京都産業大教授(和歌文学)は「冷泉家は『文書の正倉院』であると改めて認識した」評価されるのです。

 

< 私は、歴史は好きですが文学的才能はゼロだと自認しています。それでも、国宝級発見には驚きと、和紙と墨の保存能力の凄さには感動しています。>