国連安全保障理事会は25日、イスラエルとハマスの戦闘が続くガザでのイスラム教のラマダン(断食月)期間中の即時停戦を求める決議案を、米国が拒否権を行使せず棄権したことにより賛成多数で可決しました。
決議は、日本を含む非常任理事国10国が共同提案したもので、将来の「永続的な停戦」につながるラマダン中のすべての人質の即時解放と人道支援実施の確保などを紛争当事者に求めたもので、15か国中、米国を除く14か国が賛成しました。
米国はこれまでガザでハマスの壊滅を目指すイスラエルを擁護し、停戦などを求める安保理決議案に反対し、昨秋以後、少なくとも米国の拒否権行使は3回に上ります。
今回決議を阻止しなかった理由について、国連外交筋は「国際社会の圧力を前に米国はイスラエルをかばいきれなくなった」と解説しています。
軌道修正は、ガザの人道危機を顧みずに戦闘の継続を主張するイスラエルに対するバイデン米政権の不満の表れでもあります。
22日にイスラエルを訪問したブリンケン米国務長官は、ベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談で、イスラエルが計画しているガザ最南部ラファへの侵攻を実行した場合、「イスラエルは世界で孤立してしまう」と訴えたといいます。
ラファには避難民約150万人が身を寄せており、バイデン大統領は「レッドライン(超えてはならない一線)」という言葉まで使い、イスラエルにラファ侵攻の再考を強く促しています。
しかし、ネタニヤフ首相は「ラファに入ることなくハマスを打倒することは不可能だ。米国の支持がなくても我々は単独で計画を遂行する」と主張し、歩み寄りを見せていません。
ガザの戦闘をきっかけにギクシャクする両国の関係は、米国の停戦決議容認で溝がより深まりました。
イスラエル首相府は停戦決議採択に関する声明を発表し、「人質を解放せずに停戦が可能という希望をハマスに与える」と強く非難するとともに、米国が拒否権を行使しなかったことへの不満も表明しています。
米イスラエル両政府はラファ侵攻の代替案について協議することで合意していましたが、イスラエル側は一方的に中止を宣言しました。これに対し、ジョン・カービー米大統領補佐官は25日、記者団に「非常に失望している」と述べられています。
米国内で親パレスチナの世論が広まる中、バイデン政権は11月の大統領選を見据え、イスラエルに対し、人質解放のための停戦要求を強める構えです。
イスラエルが国連決議や米国の忠告を無視してラファ侵攻を強行すれば、バイデン政権は無条件でイスラエルを支えてきた伝統的な米国の政策を覆し、米国製武器の使用制限に踏み切るとの見方も出ています。
< この前「イスラエルは崖っぷちに立たされている」と書きましたが、果たして、踏み止まりますかね。>