岩手県盛岡市の古名は「不来方(こずかた)」といいます。
石川啄木ファンにはおなじみでしょう。
『不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心』
里人を苦しめる悪い鬼を神が懲らしめ、「二度と来ない」と誓わせた伝承に由来します。
「二度と来ない」という名を持つ都市は、世界にもそうはないでしょう。
最初のうち観光客をちょっと驚かせて、一種のおまじないと思って喜んでもらえるといいのです。
米ニューヨーク・タイムズ紙が発表した「2023年に行くべき52か所」の旅行先に盛岡市が選ばれました。
ロンドンに続く2番目に入り、「見過ごされがちだが魅力ある街」と紹介されています。
「豊かな自然と和洋折衷の伝統的な建物が並ぶ市内を、歩いて楽しめる秘境」と評価されたうえ、人気のコーヒー店や老舗のわんこそばも記載されています。
突然の発表もさることながら、2番という順位に観光に携わる人たちは目を丸くしたそうです。
盛岡の空は弾む心を吸い込むのに、急に忙しくなったことででしょう。
感染症という鬼はしぶとく、いまだ去りません。
不来方にあやかり、「二度と来ないで」と早く言ってみたいのです。
< 先日の編集手帳のパクリですが、確かに遠景もよく素敵な街でした。
ニューヨーク・タイムズ紙の記者もよほど気に入ったのでしょうね。
ところで私、わんこ蕎麦では何杯だったか忘れましたが、仲間内では一番でした。>