(♪~)

朝、みかんからの着信に応答する美結。

美結「もしもし」

美結「...今から?」

美結「分かった」

みかんに話したいことがあると誘われ、

服に着替えて家を出る。


待ち合わせ場所のゆめタウンに来ると

みかんが待っていた。

みかん「みゆ!」

美結「話って?」

みかん「みゆ、はなちゃんって子知ってる?」

美結「知らん」

みかん「はなちゃんって子がね?」

みかん「みゆのこと知り合いって言ってたの」

美結「誰だよ」

みかん「インスタであたしとみゆの写メ見て」

みかん「コメントしてきたの」

美結「は?お前、俺の写真載せたん?」

みかん「ダメだった...?」

美結「駄目に決まってんだろ、消せ」

みかん「ごめんなさい!」

みかんはスマホでInstagramを開く

美結「もう遅いけど」

みかん「...あれ?」

みかん「はなちゃんのコメント消えてる!」

みかん「プロフも見れない!」

美結「ブロックされたんだろ」

みかん「どうして😢」

美結「業者だろ」

みかん「それはない!」

みかん「だって、はなちゃん」

みかん「お茶さそってくれて...」

みかん「ステキなおうちに招待してくれて...」

みかん「紅茶とマカロンも食べて...」

美結「...」

みかん「みゆが恋人と別れたことも」

みかん「聞いてきたのに!」

美結「...は?なんで知ってんの?」

みかん「ウワサで聞いたって」

美結「...」

心当たりがあるのは一人しかいなかった。

美結「その女って何歳ぐらい?」

みかん「今年24才って言ってた」

美結「どんな雰囲気?」

みかん「美人さんでお姫様みたいな子」

美結「......」

美結は確信する。

美結「アイツ...」

美結「ッチ、しつけぇ奴だな...」

みかん「?...」

美結はみかんに初めて華のことを話した。

みかん「...」

みかん「あたし...どうしてさそわれたのかな...」

美結「情報収集」

美結「俺の話は本当か嘘か確かめようと」

美結「お前を見つけて近付いたってわけだ」

みかん「...これで本当って分かったかな?」

美結「さあな」

美結「あの女は正常じゃないから分からん」

みかん「...お友達になれると思ったのにな」

みかん「みゆを苦しめてた子だったなんて」

みかん「悲しい...」

美結「...」

美結「お前はもっと警戒しろ」

みかん「...」

美結「人を信じ過ぎたら痛い目に遭うぞ」

美結「もう誰も信じるな」

みかん「...分かった!」

みかん「でも、あたし...」

みかん「みゆのことは信じてるよ?」

美結「...信じるな」

みかん「いや!信じる!」

みかん「...だって、みゆだけはあたしに」

みかん「一度もウソをついたことないもん」

美結「...」

美結「いや、あるよ?」

みかん「えっ...」

美結「前、鬼ごっこで"UFO"って言った時」

美結「お前空見てたけど、嘘だから」

みかん「えぇーーっ!!」

みかん「でも、許す❤️みゆだから///」

美結「そっちかい」

みかん「...」

みかん「今思ったら悪口だったよね...」

美結「何」

みかん「昨日、はなちゃんが言ってたの」

みかん「愛はだれかにとっては罪って」

美結「...」

みかん「...あたしも同じ片想いの立場」

みかん「はなちゃんは、あおいちゃんが好き」

みかん「あたしは...みゆが好き」

みかん「小学生の時から今でも大好き」

みかん「でも、みゆとあおいちゃんは恋人同士」

みかん「あおいちゃんがうらやましかったけど」

みかん「みゆの幸せがあたしの幸せだから」

みかん「恋を応援したいって思うの」

みかん「だから...はなちゃんに負けずに」

みかん「家族にも負けずに」

みかん「あおいちゃんとの幸せを」

みかん「取り戻してほしい」

美結「...」

(ギュルルル...)

みかん「おなか鳴っちゃった...」

美結「ふw」

美結「何か食う?」

みかん「モス行こう!」


美結とみかんはモスバーガーの店に入る。

みかん「白いモスバーガーください!」

美結「私も同じので」

番号札を受け取ると窓側に座る。

みかん「ねぇねぇ...もしも、」

みかん「黒いモスバーガーがあったら?」

美結「不気味感パねえな」

みかん「青いモスバーガーは?」

美結「不味そう」

みかん「青いチーズがトロットロ!」

美結「食いたくねえww」

美結は窓に視線を向けた瞬間...

美結「...」

美結「っ...」

血の気が引く。

目が合ったのは外から美結を睨む華だった。

華「...」

美結「...」

美結は反対方向に座って背を向ける。

みかん「早く食べたいなぁ♪」

女性店員「番号札6番の方〜」

速やかに立ち上がる美結は番号札を渡すと、

商品を受け取る。

みかん「今度こそだねぇ♪」

美結「...」

黙々と店を出る美結。

みかん「まってぇー!」


美結とみかんはゆめタウンを出る。

美結「...」

警戒して外を見渡す美結。

みかん「みゆどうしたの?」

美結「...奴がいた」

みかん「ヤツってだれ?」

美結「あの女」

みかん「えっ...!どこに?」

美結「モスにいる時、外から俺を睨んでた」

みかん「...」

美結「どこまで付きまとってくんだよ」

みかん「あたしの家に行こう!」

美結「...いや、いい」

美結「ほっとこ、あんなヤツ」

美結は椅子に座るとモスバーガーの袋を開ける。

みかん「そうだね!」(椅子に座る)

みかん「...わぁあ♪チーズ白い!」

みかん「いただきまぁーす♪」

みかん「ん〜♪おいひい」

「ご機嫌でいらっしゃいますわね」

美結「...」

みかん「...っ」

声に振り向いた先には、華が立っていた。

華「実に庶民的で」

華「微笑ましいことでございますわね」

華「そのような素朴なお食事に満足できるとは」

華「ある意味、心の豊かさを感じさせますわ」

美結「そんなことを言いに来たのか」

みかん「...」

華「貴女から頂戴いたしました御手土産も」

華「私のお口には合いませんので、」

華「処分せざるを得ませんでしたが」

みかんに冷笑する華。

みかん「え...」

みかん「...」

みかんは悲しげに俯く。

みかん「あたし...なにも分からずに」

みかん「マック買って行っちゃったな...」

美結「...」

美結はみかんに察する。

美結「お前...人からもらった食い物」

美結「粗末にしてんじゃねぇよ」

華「初めから、ご親交を深めるおつもりは」

華「まったくございませんこと」

華「全ては葵様の真実を知るためにございます」

みかん「...」

美結「だからって仲間にまで近付くなボケが」

華「金輪際、貴女方の前に」

華「姿を現すことはございません」

華「私は、この目で葵様を確かめに参ります」

華「葵様の心を奪い去る所存でございます」

華「ごめんあそばせ」

美結「...勝手にしろ」

美結は食べかけのハンバーガーを袋に入れて

立ち去ると...

みかん「許さない!!」

美結「...」

響き渡る大声に振り向く人々。

みかん「みゆは中学生のとき、」

みかん「いじめられてたの」

みかん「泣いちゃう日もあったの」

みかん「そしたら...あおいちゃんと出逢ったの」

みかん「友達も離れて、ひとりきりになって」

みかん「死にたいって遺書を置いて」

みかん「カッターナイフを持ってたとき、」

みかん「あおいちゃんと結ばれたの」

みかん「みゆにとって...」

みかん「あおいちゃんは一筋の光だったの」

美結「...」

みかん「でも...みゆとあおいちゃんは、」

みかん「家族に引き離されたの」

みかん「あおいちゃんは洗脳されて」

みかん「みゆのことを忘れちゃったの」

みかん「たった一つの幸せが奪われたの」

みかん「...それでも、」

みかん「みゆは前を向いて生きてるのに」

みかん「あなたはみゆの大切な人を奪うの?」

華「もし、葵様がそのお方を」

華「お忘れになったとすれば、」

華「愛の終焉を意味することになります」

華「全くの無関係でございますわ」

みかん「終わってない!」

みかん「あおいちゃんはみゆを思い出す!」

みかん「また幸せに戻れる!」

華「...お話に値しませんこと」

華「いかなる現状においても、」

華「葵様は私と結びつく運命にございます」

華「そのことをお忘れなきよう」

華は去って行った。

みかん「......」

冷ややかな背中を睨むみかん。

美結「...」

美結「もういいよ」

みかん「...っ」

みかんは顔を隠して泣き出す。

みかん「どうして...、どうして」

みかん「みゆがまた不幸にならなきゃ」

みかん「いけないの...っ」

美結「......」

美結の頬に涙が伝う。

立ち尽くす足元に近付いてくる鳩。

別世界にいるように街を行き交う人々。