看護師「突き当たりを曲がったところに」

看護師「レントゲン室があるので」

看護師「茶色のソファーでお待ちください」

看護師はそう言って病室に戻る。

美結「...」

美結の祖母「どこ?」

美結「あっちって言ってたよね?」

美結「...」

松葉杖を使って病室を探す祖母。

指示に理解できず立ち止まる美結は、

待合席の人達から冷めた視線を浴びて

男子小学生にも鋭い目で見られる。

美結「レントゲン室...」

美結の祖母「?...」

女性「レントゲン室こっちです...」

美結「あっ...すみません...」

この歳になっても自分は頼りにならないと

痛感させられる美結。


女子中学生➀「うわ〜...」

女子中学生②「あの人、生理的に受付けないわ」

女子中学生➀「なんかやだー...」

女子中学生②「無理」

美結の陰口を言って過ぎ去る女子中学生2人。

その背後の女子大学生も美結を

上から下まで見て引きつっていた。

美結「...」

気付いてない振りをするが、

人に貶される胸の圧迫感だけは慣れなかった。


息苦しい毎日の上、愛する相手もおらず、

何一つ悪いことはしてないのに

人々から冷酷な扱いを受け、

小さな子供にも動物にも好かれないのは、

前世の自分は、命を奪った罪人で

この世に罰として傷だらけで生まれたのか、

幼い頃、火のような渦に包まれて

藻掻いていた夢の光景は、

前世の死を表していたのかと考える。

美結「...」

腕の内側にカッターナイフを近付ける。

十字架の傷を肌に刻もうとするが、

自分に傷を付けることにプライドが赦さず

愛する人に傷を刻まれるのが願だった。

美結「...」

脳裏に葵が過り、

カッターナイフが手から離れる。


みかん「もぉ〜...どうしたのぉ〜」

みかん「みゆが電話で呼び出してくれるなんて」

みかん「めずらしいねぇ❤️」

美結「...暇だから」

みかん「みゆったら///」

みかん「ねぇ!駅行こぉ♪」

みかん「天満屋でイベントやってるの!」


バスで駅の天満屋に来た美結とみかんは、

7階のイベント会場に入る。

みかん「わぁ〜♪かわいい!」

美結「水族館か」

みかん「イルミネーションもきれいだねぇ♪」

美結はスマホで動画を撮影し、

みかんは写真を撮影する。

美結「...おっ、クラゲ」

みかん「青にピンクに紫♪」

美結「生で見たらもっと綺麗」

みかん「写メ撮ろ!」

みかんのスマホ画面に映った時、

美結は急いで離れる。

美結「...嫌!」

みかん「なんでぇ〜🥺」

美結「前のこと憶えてないのか」

みかん「覚えてる!」

みかん「もうインスタに写メのせない!」

美結「インスタ以外もだぞ?」

みかん「うん!」

みかんは美結とツーショットを撮影する。

美結「...まぁ、もうアイツは来ないけど」

みかん「...」

みかん「本当にあおいちゃんのところ」

みかん「行ったのかな...」

美結「アイツのことだから行ってるよ」

みかん「でも...パリって遠すぎるよ?」

美結「金持ちなんだから」

みかん「...行ったとしても、」

みかん「あおいちゃんとはなちゃんは」

みかん「結ばれないよね」

美結「...」

美結「結ばれたとしても、」

美結「それが運命だったんだろ」

みかん「...」


その後...

美結とみかんは服屋を見て回る。

女性店員「いらっしゃいませ〜」

みかん「見て!この服かわいい♪」

美結「可愛いね」

女性店員「そちらは今日仕入れたものです」

女性店員「可愛いですよね」

美結「青いいですね」

女性店員「色違いの青も素敵ですよ」

みかん「ねぇ!みゆオソロしよ!」

美結「しません」

みかん「えぇ〜...😢」

みかん「...まぁいいや!あたしの分だけ買う!」

女性店員「ありがとうございます」

美結「え」

美結「(コイツ...金あんのか?)」

女性店員は服をたたむと紙袋に入れる。

みかん「♪~」

女性店員「一点で12000円になります」

みかん「...」

みかん「えええっ!?」

みかん「12000...」

みかん「あたし1000円しか持ってない...」

女性店員「...」

女性店員の目が点になる。

美結「...」

女性店員「あっ...またの機会で大丈夫ですよ」

みかん「ごめんなさい...😢」

女性店員「いえいえ」

みかん「がんばってお金ためます...」


美結「お前、ここ分かってんのか?」

みかん「1000円以上だと思わなかった...」

美結「余裕で桁超えるだろ」

美結「今頃、店員に鼻で笑われてるわ」

みかん「こんな高いの買える人すごい!」

美結「だから天満屋は金持ちしか来ねぇんだ」

みかん「あたしもお金持ちになりたいなぁ...」

みかん「服とか食べ物もいっぱい買える!」

美結「...だからって幸せとは限らない」

美結「金があれば余裕のある生活ができるけど」

美結「自由に恋愛できないのは嫌だな」

みかん「...どういうこと?」

美結「生まれた時から結婚相手が決まって」

美結「愛する人ができても引き裂かれる運命」

みかん「...」

みかん「あおいちゃんは幸せじゃないね...」

美結「...でも、葵の記憶から俺は消えた」

美結「苦しみは無くなったから幸せだよ」

みかん「...」

美結「俺も葵の記憶を消すって決めたから」

美結「思い出す話もよそう」

美結は先に歩いて行く。

みかん「...それは違う」

美結「...」

みかん「みゆまで忘れたら」 

みかん「本当に愛が終わっちゃう」

美結「終わってるよ、もう」

みかん「"永久の愛"って誓い合ったんでしょ?」

美結「愛し合ってこそ、永久の愛だよ」

美結「俺だけ愛しても意味無い」

みかん「...みゆ」

みかん「何があっても想い続けるこそが」

みかん「永久の愛だよ!」

みかん「一緒にあおいちゃんを」

みかん「取り戻しに行こう!」

美結「...」