夕方を過ぎた頃...

美結と母は駅前の夜店に来た。

子連れの家族、友達同士の中高生、

若いカップルなど大勢の人々が賑わう中、

浴衣の店員や子供も目に入る。

人混みの道を避けて歩いていると、

顔がデザインしてあるチョコバナナの

屋台を眺める。

チョコバナナを受け取った女児が

嬉しそうに去ると、美結は屋台の前に立つ。

男性店員「いらっしゃいませ〜」

美結の母「一つください」

男性店員「は〜い」

美結はチョコバナナを受け取る。

男性店員「はい、ありがとう〜」

端に立つ美結はスマホで写真を撮っていると...

「あーーっ!!」

突然の甲高い大声に振り向く人々。

視線を向ける美結。

美結「...っ!?」

そこには、見覚えある女性が美結を見ている。

美結「(...みかん?!)」

彼女は、あの"みかん"だった。

みかん「みゆ〜!!」

美結の母「知り合い?」

美結「みかん」

美結の母「えっ!みかんちゃん?」

みかん「みかんだよぉ♪」

美結の母「分からんかった、子どもの頃以来で」

美結の母「大きくなったな〜」

みかん「えへへ」

みかん「最後にみゆとお話したの」

みかん「中学生の時だったからねぇ」

美結の母「何年前?」

美結「9年前だな」

みかん「そのチョコバナナかわいい😍」

美結「面白いから買った」

みかん「いいなぁ〜!どこに売ってたのぉ?」

美結「あっち」

みかん「あっち?ってどっちだぁ...?」

美結の母「教えてあげ」

美結の母「うちは天満屋に戻るけ」

美結「え、あ...」

美結の母は去って行く。

みかん「教えて♪」

美結「はいはい」

美結はみかんを連れて

チョコバナナの屋台に戻る。

美結「ここ」

男性店員「いらっしゃいませ〜」

みかん「うわぁあ〜♪かわいい〜❤️」

男性店員「どうですか〜?」

みかん「ください!」

男性店員「はい、400円です」

みかん「400円...あっ...」

美結「...」

みかん「さっき全部使っちゃったんだった...」

美結「え〜...何やってんだよ...」

みかん「うえぇ〜ん😭」

美結「すみません...また来ます」

男性店員「は〜い」

美結はみかんの腕を引いて屋台から離れる。

美結「そんなもん買うからだよ」

みかんの手には、シカのビニール玩具や

ヨーヨー、指人形、光りものがある。

みかん「かわいいからいっぱい買っちゃった♪」

美結「いい歳こいて」

みかん「...チョコバナナ欲しかったなぁ」

美結「俺もバッグ車に忘れたから」

美結「金持ってねんだよな」

みかん「...」

美結「...」

美結はみかんにチョコバナナを渡す。

みかん「えっ...いいの?!」

美結「いいよ、写真撮りたくて買ったから」

みかん「わはぁ〜い!みゆありがとぉ♪」

みかんはチョコバナナの写真を撮ると、

幸せそうに食べる。

美結「...」

久々に無邪気な姿を見て微笑ましく感じる美結。

みかん「...?」

美結「...」(目をそらす)

みかん「みゆのばんそうこうかわいいねぇ♪」

美結「可愛くない」

みかん「そのオシャレもステキ☆」

美結「そういう意味で貼ってないから」

みかん「じゃあ、なんで貼ってるのぉ?」

美結「ケガ以外無いだろ」

みかん「えっ!?大丈夫?😢」

美結「大丈夫」

みかん「だれかにまたいじめられた...?」

美結「この歳にもなっていじめられるわけw」

美結「...まぁ、やられたのは合ってるけど」

みかん「だれにやられたの?まりかって子?」

美結「それは中学の頃だろ」

みかん「じゃあだれ?」

美結「みかんが知らない人だよ」

みかん「...みゆをいじめるなんて許さない!」

美結「いいよもう、大丈夫だから」

そこへ男子小学生達が走ってくる。

男子小学生➀「いそげ!」

男子小学生②「ひゃははは!」

美結は避けようと下がった瞬間、

背後の人にぶつかる。

(ボンッ)

美結「あっ...ごめんなさい」

振り向くと、美結を睨んでいる女子中学生達。

女子中学生➀「いった...」

女子中学生②「大丈夫?」

女子中学生➀「マジでムカつく」

美結「...」

よそ見をしているみかんは、

美結の状況を見ていなかった。

みかん「みゆ!プリクラ撮ろぉ!」

美結「...うん」

みかん「あぁっ!チョコバナナが溶けちゃう!」

みかん「みゆ!走るよぉ!...うわぁあっ!」

チョコバナナを落としそうになるみかん。

美結「ちょいちょ...」

美結「いっぱい持ちすぎなんだよ」

美結「これ持っとくわ」

美結はみかんの食べかけの

チョコバナナを持つと、

人混みを速やかに抜ける。

美結「...っ!」

立ち止まった時、

地面にチョコバナナが崩れ落ちた。

その瞬間を目にした男子高校生達が鼻で笑う。

男子高校生達「...ふっw」

美結「...」

美結「ごめん、落ちた」

みかん「えぇ〜!そんなぁ〜...😭」

みかん「でも、いっぱい食べたからいいよぉ」


美結とみかんはプリクラ専門店に入ると、

中高生の女子が集っている。

美結「...」

みかん「どれにしよっかなぁ〜♪」

みかん「みゆどれがいい?」

美結「...あまり加工無いやつで」

みかん「加工しないプリクラあるかなぁ」

美結「無いだろうな」

みかん「...あっ!これにしよぉ!」


撮影後、プリクラにらくがきをする。

みかん「もぉ〜、みゆぅ」

みかん「あたし片手でハート作ってるのに」

みかん「ムシなんてひどいよぉ〜🥺」

美結「恋人にしかしません」

みかん「...知ってる!」

みかん「あおいちゃんにしかしないもんねぇ」

美結「...」

みかん「みゆの恋人ってうらやましいなぁ」

みかん「イイなぁ〜、イイなぁ〜...❤️」

美結「...葵とは別れたよ」

みかん「...」

みかん「えっ!?」

みかん「なんで?!」

みかん「いつもあんなにあおいちゃんのこと」

みかん「幸せそうに話してたのに!」

みかん「...ケンカしちゃったの?」

美結「喧嘩はしてない」

みかん「じゃあどうして?」

美結「色々あったのよ」

みかん「何があったの?」

美結「いやー...話せば長いから」

みかん「長くてもいい!話して?」

美結「...」

女子中学生達「きゃははは!」

美結「...後でね、静かな場所で」


プリクラ専門店を出た美結とみかんは、

天満屋に入る。

閉店時間のセールで並んでいる人々。

みかん「わぁあ〜♪」

みかん「チョコまんじゅうおいしそう!」

美結「美味そう」

みかん「温めてもおいしいんだって!」

みかん「あっ!抹茶もある!」

美結「...」

みかんはさっきの話など忘れているだろう。

そう思った時...

みかん「ねぇ!さっきのお話の続きは?」

美結「っ...覚えてたのか」

みかん「覚えてるよ!」

みかん「あおいちゃんと別れたなんて」

みかん「信じられないの!」

美結「...」

美結「別れざるを得なかったんだ」

みかん「...?」

美結はみかんに全てを話した。


みかん「...どうして」

みかん「どうして?」

みかん「みゆとあおいちゃんは」

みかん「愛し合ってるだけなのに」

みかん「何も悪いことなんてしてないのに」

みかん「引き裂かれなきゃいけないの...?」

美結「...そういう運命だったんだよ」

美結「運命は決められてるから逆らえないのさ」

みかん「...」

みかん「ねぇ、みゆ」

美結「ん」

みかん「本当に離ればなれでいいの...?」

美結「うん」

美結「それがお互い幸せだよ」

美結「葵も俺を忘れて、俺も葵を忘れる」

美結「苦しみ続けても意味無い」

美結「恋なんてやめて友達と遊んで」

美結「人生楽しく満喫する」

みかん「...」

そこへ美結の母が戻って来る。

美結の母「半額で夜ご飯買ったわ」

美結の母「帰ろっか」

美結「うん」

みかん「バイバイ!」

美結の母「は〜い」

みかん「...あっ!」

美結の母「?」

みかん「みゆLINE教えて!」

美結「LINE使わんからインスタでいい?」

みかん「うん!」

Instagramで美結をフォローするみかん。

みかん「あたしのこともフォローしてね❤️」

美結「恋人以外はフォローしないんで🤚」

みかん「あれぇ?みゆ、"恋やめる"って...」

美結「...そうだね、じゃあ誰もフォローせんw」

みかん「えぇ〜!」

美結「じゃ」

美結の母「(笑)」

美結と母は去って行く。

みかん「...」

みかんは美結の話に納得していなかった。