2018年8月13日


彩花「...ねぇ...、なんで"どっちも好き"なの...」

美結「それは...それは...っ...」

美結「本当に二人のことが大好きだから...」

美結「愛してるから...」

美結「どっちか一人をあきらめるだなんて...」

美結「絶対無理だよ...!...っ」

彩花「......」

彩花「...そっか...(T∀T)」

彩花「...じゃあ、」

彩花「...殺すね...」

彩花「...」(鎌を自分に振り上げる)

美結「いやっ...!!」

(ブシャッ!!)

美結「はっ...嫌だ...嫌だ嫌だ!!」

美結「嫌あああああ!!!」

葵「美結...」

美結「はあっ!うっぐっうわあああああ!!!」

葵「あの頃の約束...憶えてる...?」

美結「はあっうっ...はっ...はあっ...!」

葵「中学校の卒業の時...誓ったよね...」

美結「...っ...」

葵「永久の愛...って...」(鎌を持つ)

美結「はっ...!...やめ...」

葵「...」(自分に振る)

(ブシャッ!!)

美結「いやああああああ!!!」

美結「ごめんなさい...」

美結「本当にごめんなさい...!!」

美結「嫌だよおおお!!」

美結「うわああああああああ!!!」(鎌を持つ)

(ブシャッ!!!)







あれから6年...

帰り道の車に揺られる美結は目を閉じる。

(けんかをやめて 二人をとめて♪)

(私のために 争わないで♪)

耳に入ってくるラジオの曲に目を開ける。

美結「......」

脳に蘇るあの日の光景。

(ごめんなさいね 私のせいよ)

(二人の心 もてあそんで)

美結「...」

瞬きを止めて窓の外を眺める。


その夜...

美結「同じタイプの人を...♪」

美結「好きになってしまう...♪」

美結「...(笑)」

美結「俺、どうかしてるな」

美結「またあの感覚を求めるなんて」

美結「求め過ぎてあんなことに至って」

美結「...俺ら未遂で命拾いしたってのに」

美結「でもさやっぱ二人に逢いたいよ」

美結「あの日から音信不通になんだもん」

美結「...」

美結「二度目は無い...と思ってた」

美結はスマホでキーパッドを開く。

美結「...何やってんだか」

美結は振り払うようにスマホをテーブルに置く。

美結「...」

桃色の香水をそっと口に近付ける。

ロザネウザの香りは昔の恋。

美結「...」

脳に広がる一滴が刺激を呼び覚ます。

美結「...っ」

思い立ったようにスマホを再び手に取ると

キーパッドに葵の電話番号を打ち込み

躊躇いなく発信ボタンを押した。

(プルル...プルル...)

(プルル...プルル...)

美結「...」

我に返って恐くなった美結は、

電話を切ろうとすると...

(プルルッ...)

美結「っ...」

(お掛けになった電話番号は、電源が...)

美結「...びっくりした」

美結「え、電話番号変えてないよね...?」

美結「...」

美結は勢いを止めず彩花にも電話を掛ける。

(プルル...プルル...)

(プルル...プルルッ)

美結「...?」

さっきよりも早く止まった音に息を呑む。

(電話)

「はい...?」

美結「っ...」

その声に鼓動が速まる。

美結「あ...彩花さんの携帯で合ってますかね?」

彩花「はい...」

美結「...憶えてます?」

彩花「え...?」

美結「...」

美結「美結です」

彩花「...はい」

美結「...」

美結「いきなりごめん」

美結「もう俺と話したくないよね...」

彩花「...」

美結「...ごめん!もう掛けないよ」

美結は電話を切ろうとすると

彩花「待って」

美結「...?」

彩花「それは...」

美結「え?何...?」

彩花「それは思ってない」

美結「本当に?」

彩花「...うん」

美結「...」

美結「あの時はごめんなさい」

彩花「...美結は悪くないよ」

美結「貴方のことも好きになった故に」

美結「二股掛けちゃって」

美結「あんな事に至らせちゃって...」

彩花「...」

彩花「それぐらい好きだったからね」

美結「...」

美結「今は...好きじゃないよな(笑)」

彩花「...」

美結「調子乗ったわ」

美結「聞かんかったことにしてくれ」

彩花「好きだよ」

美結「っ...」

口を隠して赤らむ美結。

美結「...俺も好き」

彩花「...」

彩花「宮林さんのことは...?」

美結「...」

美結「もう冷めた」

彩花「...そうなんだね」

美結「うん、だから...貴方のもの」

彩花「...」

美結「まだ不安なら、会う?」

美結「会って傷入れるか」

彩花「...うん」

美結「じゃ、明日の昼12時に来て」

美結「ばら公園に」

彩花「...薔薇公園?」

美結「もう忘れた?緑町公園の近く」

彩花「...調べて行きます」

美結「うん、宜しく」

すると、美結のスマホにキャッチが掛かる。

美結「っ...」

美結「じゃあ、そろそろ寝るね」

彩花「うん、分かった」

美結「お休み、また明日」

彩花「お休みなさい」

美結「愛してる」

美結はそう言い電話を切ると

急いでキャッチに出る。

美結「もしもし」

美結「...あっ、切れてるじゃん」

美結は着信履歴を開くと

葵の電話番号だと確定して発信する。

(プルル...ッ)

美結「...っ」

(電話)

「...もしもし?」

美結「葵...?」

葵「そうだよ」

美結「誰か分かる?」

葵「...分かってるから掛けたんだよ」

美結「...久し振り」

葵「久し振り」

美結「ごめんね、葵」

美結「葵のこと裏切っちゃったね」

葵「...美結が他の人を愛しても」

葵「僕の気持ちは変わらないよ」

美結「...愛してるってこと?」

葵「永久の愛だからね」

美結「今も...?」

葵「今もこの先もだよ」

美結「...」

美結「じゃあどうして連絡くれなかったの?」

葵「...恐くて出来なかったよ」

美結「恐かった...?」

葵「あの人のところへ行く美結を見たら...」

葵「また壊れてしまいそうで」

美結「...大丈夫だよ、もう」

美結「彩花には冷めた」

美結「私は貴方のものだから何処にも行かない」

葵「...本当に?」

美結「うん」

葵「美結...嬉しいよ...」

葵「僕のものだよ...」

美結「葵のもの...」

美結「だから明日死ぬ手前まで傷入れ合おう?」

葵「うん...」

美結「明日の昼12時にばら公園に来て」

葵「ばら公園ね、分かった」

美結「...ねぇ」

葵「うん?」

美結「もし、また俺が彩花のところ行ったら」

美結「どうする?」

葵「...今度は相手の命を奪うかもしれない」

美結「...」

葵「...それか」

葵「美結と逝くかもね」

美結「っ...」

美結の胸がズキンと波打つ。

美結「嫌って言ったら...?」

葵「...愛には勝てないよ」

美結「...///」

葵「美結、どうしてそんなことを...?」

美結「なんでもないよ?もしもだから」

葵「...それならいいけど」

葵「僕は本気だからね」

美結「...うん」

葵「美結」

美結「ん...?」

葵「愛してるよ」

美結「俺も...」

葵「明日逢うのを楽しみにしているよ」

美結「うん❤️」


久々に二人と話した美結は、

改めてどっちが好きかと脳に聞くと

今は葵へ心が寄っていると分かる。

不安な彩花、何かを感じる葵。

胸騒ぎの快感に眠れない美結は身体を撫でる。

相手の血を塗るように。


翌朝...

こだわりなく白色のTシャツと

紺色のデニムズボンに着替えた美結は、

5月のカレンダーをめくる。

美結「今日から6月か」

美結「...」

急激に緊張と不安が増す美結は、

友人の千紗希に電話を掛ける。

(電話)

美結「もしもし、おはよー」

千紗希「おはよ〜、久しぶり〜」

美結「久し振り」

千紗希「元気しとった〜?」

美結「うん、今はね(笑)」

千紗希「どゆこと(笑)」

美結「今日彼氏達と6年振りに会うんだけど」

千紗希「え、みゆ彼氏できたん?」

美結「二人いるよ!」

千紗希「マジ?」

美結「一人目は中3から、二人目は高1から」

千紗希「大丈夫〜?😅」

美結「彼氏ゆーても女の子だからね」

千紗希「あー...」

千紗希「でも、後々大変なことになるから」

千紗希「気を付け〜よ?」

美結「もうなってるけどねwww」

千紗希「え〜...やっぱり...」

美結「6年前みんなで自殺未遂したよ(笑)」

千紗希「は?!」

美結「鎌で首切った」

美結「早く見つけられたから入院で済んだけど」

千紗希「...」

美結「病院生活は長かったよ〜」

美結「体と心のケアも兼ねて半年過ごした」

千紗希「...死に至らなくて良かったわ」

美結「傷跡はすっかり消えとるよ」

美結「手術跡は...消えないけど」

千紗希「後遺症とかは...?」

美結「...心にはあるよ」

千紗希「...」

千紗希「その彼氏さん達とまた会うん...?」

美結「今度は殺されるかも(笑)」

美結「相手がいたら"美結と逝く"って」

千紗希「それやめときな〜...」

千紗希「本当に取り返しのつかんことになる」

美結「"かもね"だから本当にはしないと思う」

美結「..."本気だよ"って言ってたけどね」

千紗希「危険しかない」

千紗希「死ぬだけはやめて...」

美結「大丈夫、その時は逃げるから」

千紗希「...」

美結「千紗希はどう?彼氏と相変わらず?」

千紗希「毎日カレとLINEしとるよ」

美結「そっか」

美結「千紗希は幸せになれよ」

千紗希「...みゆもね?」

美結「俺は幸せだよ、死んでもね」

千紗希「...」


待ち合わせの時間は1時間前になって...

美結「...そろそろ行くか」

黒色のショルダーバッグを

右肩から斜めに掛けて玄関へ向かう。

美結の母「どこ行くん?」

美結「公園」

美結の母「昼ご飯食べて行き」

美結「帰ってからでいい」

美結の母「後からお腹空くって」

美結「いい」

美結「暇だから」

美結の母「何時に帰って来るん?」

美結「夕方には帰る」

美結の母「...分かった、車に気を付けて」

美結「行ってきます」


いつもと変わらない平凡な町を歩く。

美結「...」

縮まる距離に胸が締め付けられる。


30分後...

ばら公園に着いた美結は警戒して見渡す。

美結「...まだいないよね」

美結「葵の方が早く来そうだけど」

ベンチに背を向けて座った美結はスマホを触る。

美結「...」

美結「やっぱりやめるべきだったかな」

いても立ってもいられない美結は

薔薇園を回って気持ちを紛らわす。

美結「この薔薇...変わった模様」

美結「味わったことのない恋愛のように」

美結「...」

美結「座って待っとくか」

美結は再びベンチに戻ろうとすると...

「美結?」

美結「っ...」

その声は葵だと分かって立ち止まる。

美結「葵...?」

葵「そうだよ」

美結「...」

美結は恥ずかしさと不安な気持ちに顔を隠す。

葵「...?」

美結「...」

美結は振り向かず前へ歩く。

美結「...」

ベンチに背を向けて座る美結は

スマホの手帳カバーで顔を隠す。

その横に座る葵は美結を見ている。

葵「恥ずかしい...?」

美結「...」

葵「...」

葵は美結の手を優しく握る。

美結「っ...」

美結は顔を上げて葵と目を合わせる。

葵「やっと目を合わせてくれたね」

美結「...」(葵に抱きつく)

美結の背中を撫でる葵。

その時、美結のスマホ画面に表示される

彩花からの着信が葵の目に入る。

葵「......」

美結「?...」

突然、動きが止まった葵に視線を向けると

生気ない目で一方向を見ている。

美結は恐る恐る視線の先へ向くと

スマホ画面に血の気が引く。

美結「...」

美結「あ...あの彩花じゃないよ?」

美結「同じ名前の友達で...彩花って人がいるの」

葵「...そうなんだ」

美結「...」

美結「葵...?」

葵「大丈夫だよ」

葵「あの彩花さんじゃないなら」

美結「...うん」

葵「愛し合おうか」

美結「...」


公衆トイレに入ると葵を入れて鍵を掛ける。

美結「...」

美結は葵に目を合わせようとしない。

葵「...」

葵は美結の頬を撫でる。

美結「...」

強張る表情で言葉が出ない美結。

心の免疫がついたのか、年齢もあってか、

6年前のように悪事に胸が躍らない。

葵「...」

バッグからダマスカスナイフと止血帯を出す葵。

美結「っ...」

現実味に身体が熱くなる美結。

美結「...」

美結もバッグから水色のミニカッターを出す。

美結「死ぬ手前...」

葵「死ぬ手前まで愛し合おうね」

葵は美結の手首を内側に向けると

ナイフを近付ける。

美結「待って、内側は恐い...」

美結「血管見えるから...」

葵「ごめんね...じゃあ外側にしようか」

美結「...そんなに切りたい?」

葵「うん、美結に僕の愛を刻みたいよ」

美結「...///」

美結「それから?」

葵「...写真を撮って美結が居ない時は鑑賞する」

葵「美結の血も飲みたい」

美結「...可愛い人」

葵は美結の手首の外側にナイフを近付ける。

美結「だーめ」

葵「...」

葵「やめるの?」

美結「うん」

葵「...そっか、美結がそう言うならね」

美結「...」

美結「今どんな気持ち?」

葵「...ちょっと悲しいかな」

美結「ちょっと?」

美結「...かなりじゃなくて?」

葵「...そうだね、かなりだね」

美結「あぁ〜...嘘ついちゃった」

美結「正直に言ったら切らせてあげてたのに」

葵「...」

美結「泣くの?泣いちゃうの?」

葵「...」

葵「泣きそうだよ」

美結「...」

美結は葵の頬に手を添えて唇にキスをする。

美結「後でね❤️」

美結「(っ...)」

美結は彩花を思い出す。

美結「(...もう今来てたりして)」

美結「(外へ出たら...悪夢が始まる)」

美結「(今ならやめれる...何とか...)」

あの頃よりも現実的になっている美結だが

迷いの振り子は二人を呼び出した意味へ傾く。

美結「...」

美結「葵、怒らないでね」

葵「...?」

美結「大好きよ」

美結はそう言いトイレの個室を出る。


美結「...」

美結「っ...」

目先には美結を探す彩花がいた。

美結「...」

彩花「...」

目が合ったところへ葵も外に出てくる。

彩花「...っ」

葵「......」

三人の時間が止まった瞬間だった。

美結「...」

後退りする彩花の様子に振り向くと

ナイフを向けて近付いている葵。

その目は殺意しか無かった。

美結「っ...」

予想外の急展開に青ざめる美結。

美結「葵やめて...違うの...」

葵は彩花の腕を切りつける。

(プシャッ!)

美結「やめて!」

葵は倒れる彩花を容赦なく滅多刺しにする。

その光景に通行人達は急いで逃げる。

血に染まった彩花は身動きせず。

平常心ではない美結は

葵からナイフを奪って自分の首を刺す。

(ブシャッ...ボタボタボタ...)

葵「っ!...美結!」

美結「ナイフを抜いたらもっと血が噴き出るよ」

葵「...」

葵「そうなるなら君を先に殺すんだった」

美結「...もし彩花がいたら」

美結「俺と逝くんじゃなかったの」

葵「...そうだね」

美結「...俺も俺だね」

美結「自分の手で自分を殺しちゃったね」

葵「...」

美結「仕上げは貴方がお願い」

葵「...分かった」

葵「美結も同じことを僕にして」

葵はもう一つのナイフを美結に渡す。

美結「...俺の分も持ってきてくれてたんだね」

葵「うん」

美結「葵...愛してるよ...」

葵「...美結」

美結はナイフで葵の首を刺す。

(グヂュッ...)

葵「...もっと奥まで」

美結「...」

美結は躊躇いを押し殺して頸動脈に貫通する。

(ボタボタボタ...)

葵「うっ...」

葵も美結の首に刺さっているナイフを奥に刺す。

(ドボドボドボ...)

互いに噴き出る血が足元まで伝う。

葵「美結っ...」

美結「っ...葵...」

強く抱き締め合い倒れた美結と葵のところへ

警察達が走って来る。


────────────────────

美結(23歳)

葵(24歳)

彩花(23歳)

千紗希(26歳)


【実際の舞台】





【筆者】

感情の勢いで6年後の話ができたが

翌朝続きを仕上げた。

夜の感情は朝になったら冷めるから

後半から終わり方も曖昧になった...。