初対面でゆりかへ恋をしたみゆは、

夕方になった頃...

城の庭で一緒にベンチに座ると

意を決して愛情を表に出します。


ゆりか「ふー...そろそろ行くかな」

みゆ「...」

みゆ「寂しいな」

ゆりか「ふふっ...(笑)」

みゆ「ゆりも寂しい?」

ゆりか「うん...寂しいねー...」

みゆ「...」(ソワソワ)

ゆりか「それ買ったの?」

みゆ「っ...」

みゆ「はい」

みゆはゆりかに薔薇模様の箱を渡します。

ゆりか「くれるの?」

みゆ「ゆりへ買った」

ゆりか「えっ、いいの?なになに?」

みゆ「バレンタイン...だったから!」

ゆりか「えっ!チョコ?嬉しい!」

ゆりか「ありがとう〜...自分買ってないな...」

みゆ「今食べていいよ」

ゆりか「じゃあ、いただこうかな」

ゆりかはチョコレートを手に取ります。

みゆ「...」

みゆもチョコレートを手に取ります。

ゆりか「食べていいよ」

みゆ「食べないよ〜w」

みゆはチョコレートをゆりかの口に持って行き

食べさせます。

口をもごもごとして食べるゆりかを見て

胸が高鳴ります。

みゆ「...///」

ゆりか「ごめんね、何も買ってなくて...」

みゆ「お礼なんていらないよ」

ゆりか「いやいやー...」

みゆ「...いらないからさ」

みゆ「代わりに抱き締めて」

ゆりか「...」

ゆりか「しょうがない、買ってくれたし...」

ゆりかはショルダーバッグを下ろすと

そっと立ち上がってみゆを抱き締めます。

ゆりか「...」(サッ)

みゆ「っ///...」

みゆもゆりかの背中に手を添えます。

脳が真っ白で夢を見ているようでした。

22年生きて初めて

ボーイッシュの女性と抱き合ったのです。

数秒後、ゆりかはみゆから離れてベンチに戻り

ゆりか「...ありがとっ!」

みゆ「///...」

みゆはベンチから離れると

橙色の空を見て顔を隠します。

ゆりか「...」

みゆ「...」(ベンチに座る)

みゆ「ゆり...」

ゆりかに近付くみゆ。

ゆりか「?」

みゆ「...あの人達が通り過ぎたら」

みゆ「もう一回抱き締めて?」

ゆりか「...」

ゆりかは観光客が過ぎ去ったのを見て

みゆの肩を抱き寄せます。

みゆ「///...」(顔を隠す)

みゆ「もう一回抱きついていい?」

ゆりか「...」(立ち上がる)

立ち上がってゆりかに抱きつくみゆ。

ゆりかは背中に手を添えかけますがやめました。

みゆ「...///」

ゆりか「...満足した?」

みゆ「うん、ありがとう」

みゆは幸せでした。

再びベンチに座って沈黙になる。

ゆりか「...」

ゆりかは何か言いたそうでした。

ゆりか「うーん...」

みゆ「...?」

みゆ「なに?w」

ゆりか「いや、なんでもない」

みゆ「言っちゃえよw」

ゆりか「...」

ゆりか「さっきさ、みゆは

ボーイッシュになりたいって言ってたじゃん?」

みゆ「うん」

ゆりか「自分はフェムから中性の人が

好きなんだよね...」

みゆ「...私、元フェムなんだけど」

みゆ「男の子っぽかった?」

ゆりか「いや、そう言うことじゃなくて」

ゆりか「その話を聞いてから」

ゆりか「自分のタイプではないなと思った」

みゆ「...」

ゆりか「ごめんね...別れ際に

こんな話したくなかったんだ」

ゆりか「もっと早く言えば良かったな」

みゆ「...うち告白してないよ?w」

ゆりか「あっ...知ってる知ってる」

ゆりか「自惚れだったら申し訳ないんだけど」

ゆりか「もしかして...みゆは自分のこと」

ゆりか「恋愛的に見てるのかな〜...と思って」

みゆ「見てなかったら抱きついてとか言わない」

ゆりか「だよね、だから...」

ゆりか「みゆが恋愛的に見てくれてるように」

ゆりか「恋愛的に返せるかどうかは分からない」

みゆ「...うん」

ゆりか「この先、みゆが自分のこと好きになって

告白とかになったらって考えたら...」

ゆりか「先に言っといた方がいいかなって」

ゆりか「チョコも嬉しかったし」

ゆりか「今日は本当に楽しかった」

ゆりか「楽しかったんだけど...」

ゆりか「好きとは違うかな...」

みゆ「...そっか」

みゆ「うん...話してくれてありがとう」

みゆ「正直に伝えてくれて良かったˆ ˆ」

ゆりか「ありがとう...優しい...」

ゆりか「怒るかな...って思ってたから」

みゆ「そんなことで怒るほど子供じゃないよw」

みゆ「何も分かってあげられてなくてごめんね」

ゆりか「いやいや...」

みゆ「じゃあ...友達になろうˆ ˆ」

ゆりか「友達でよろしくお願いします...」

みゆは悲しみを隠して

駅の改札まで愛想笑いを続けました。


こうしてみゆの恋は、

初日で終わってしまいました。

この日まで、

ゆりに対して精神的に寄り掛かってたみゆは

未来への希望も失ったのでした。