ケンドー・カシンこと石澤常光選手は、最近試合をしていないと思っていたら、早稲田大学で学んでいたのですね。
このたび「日本におけるプロレス団体のマネジメントに関する考察」という論文を発表したので読んでみました。
日本のプロレス・格闘技はTV中継が深夜枠に追いやられて衰退し、今や斜陽産業となっているのに対し、アメリカはWWEやUFCなどが数百億円規模となっており、しかも年々拡大しているが、それはなぜなのかといったことに対して、カシンが考察している。
日本に新しいスター選手が生まれない原因の一つは、バルセロナ・オリンピックに出場したほどの逸材である中西学が長年中堅どころに甘んじていて育たないため(現在はIWGP王者)、以降アマチュアレスリング界からプロレス界に人材が入ってこなくなり、それが人材のマンネリ化を招いていると指摘している。
財務の面からも比較している。日本を代表する新日本プロレスは2005年にユークスの子会社となっているが、その年も含めて現在まで1回も黒字がなく、危うい状況にある。
WWEは株式を公開したことやPPVなど複数の収入口がありそこで資本調達をし、自己資本比率が高く安定した経営をしている。
WWEは株式を公開したことやPPVなど複数の収入口がありそこで資本調達をし、自己資本比率が高く安定した経営をしている。
また、ストーリー展開においても新日本プロレスとWWEのシステムの違いなどを比較しているのが興味深い。(新日本プロレスでは現在、邪道・外道選手を含めて6名がストーリーライン作りに関わっているという)
日米の人気選手も比較しているが、総じて新日本プロレスの選手に魅力が足りないという結果が出た。以前は移籍などをして商品価値を高めていたが、現在は団体対抗戦をしてもカルテルなどの横のつながりがあり、選手の貸し借りはあるが移籍は難しくなってきた。リスクを誰もとろうとしなくなりつまらなくなったと指摘している。
新日本プロレスは資本力が乏しく、そのため選手やそれをとりまく環境に投資ができない状況にある。
今後はデジタルメディアを最大限に活用し、さまざまな展開をすることで資本力を高めるとともに、経営状態を公開することが必要だと述べています。
今後はデジタルメディアを最大限に活用し、さまざまな展開をすることで資本力を高めるとともに、経営状態を公開することが必要だと述べています。
プロレスについてまとめた論文はほとんどないと思うし、しかもレスラーが執筆したということで、この論文の注目度も高まるのではないでしょうか。