plain

飛行機の中、缶ビールを飲みつつ、サンドウィッチを食べる。
ビールを飲んだせいで、空の上ではあるのだけれど、地に足がつかないふわふわした感覚になった。
出発前にロビーで見ていた、スペースシャワーTVでランキング1位だった曲が、頭の中で何度もリピートされている。
頭をリセットしようと、機内誌に手を伸ばすが、すぐに読み飽きてしまった。
ふと窓の方へ目をやる。
窓側の隣の座席に座った太った女の向こうに見えた、高度1万1000mの光景。

退屈なくらい同じ光景が続く。
はめ込みの画だと言われても納得してしまうだろう。
眼下には雲が一面に広がっている。
今日は雲が多い。

しばらくして雲の海がはたと途切れた。
緩やかな起伏の表面には、ビリジアンのもっと濃くした色の木々が緻密に生い茂っていた。
そして平地には小さな町が、いや、それは大きな街だったかもしれない。
でも高度1万1000mで太った女ごしに見ていたので判別ができなかったし、どちらにしてもそれは大した問題ではなかった。

僕はブラックホールのことを思い出した。
可能性のないブラックホール。

地球がブラックホールに飲み込まれて、そのブラックホールがゴルフボールの大きさになるという話。
スイスとフランスの国境あたりに建設された、素粒子加速実験装置の施設。
膨張していく宇宙、暗黒物質、ヒッグス粒子。
僕の理解を遥かに越えている。

可能性はないけれど、マンガみたいに、眼下の地球がブラックホールに飲み込まれる様を思い描いた。
みんな飲み込まれてゴルフボールの塊になった。
地球を飲み込んだあと、この飛行機も飲み込まれるだろうか?
そりゃそうだろうな。
でもどんなに想像しても、この飛行機は飲み込まれなかった。
真っ黒なゴルフボールを見届ける。何度も何度も。

いつの間にか眠ってしまっていた。
福岡空港に到着すると、お米がカビそうな天気だったあめ

実家に帰って米焼酎を浴びるほど飲んだ。
事故米のことなんてすっかり忘れてた。
重大な事件は、似たような重大な事件に次々と埋もれていき、薄れていく。
僕らに考える時間はない。
ただ受け入れるだけ。
だって一週間後には忘れてるでしょ。
罪の意識も、僕らの憤りも、同じように薄れていく。

それなら、考えるのはやめて焼酎でも飲んで話そう。
それがいい。
だって僕の理解を遥かに越えているのだから。