季節の移ろいは早いもので、気がつけば早くも年末となってしまいました。あの暑かった夏も今では夢か幻のように感じられますね。

最近某オークションサイトを眺めていると、レア物アンバサダーの質問欄に「コグホイールの支柱は真鍮色か銀色か?」と言ったような質問を良く目にします。

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近年ではサイモン下村氏の著書、「アンバサダーと私」の登場によって、これまで神秘のベールに包まれていたアンバサダーの謎が次々と解き明かされ、そのおかげで僕をはじめとする素人コレクターの知識が飛躍的に向上しました。先に挙げたコグホイールの支柱の件も、多くの方がこの本の中に書かれている記述によって得た知識なのではないかと思います。

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上の画像はそのサイモン下村氏の著書である「アンバサダーと私 最終章」の139ページです。ここではアンバサダーの左カップのコグホイールの支柱が大きくアップされていて、左側が真鍮剥き出しの支柱、右が銀色のメッキがかけられた支柱を図示してあります。さらに、オリジナルのカップは真鍮の支柱であり、メッキがかけられた支柱は再生産品であるとはっきり書かれています。

僕はこの記述を初めて読んだ時、一つの疑問を感じました。なぜなら僕が当時リアルタイムで購入した80年製のアンバサダーの支柱は、全てメッキがかけられたものだったからです。

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左800301 右790101

上の画像は僕が所有している5500の79年製と80年製を並べてみたものですが、両機とも同じバージョンナンバー01で、ステッカーの色以外は大きな相違は無いものです。

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左800301 右790101

その左カップをバラしてコグホイールを外してみると、画像では分かりにくいのですが、左の80年製はコグホイールの支柱はメッキがかけられており、右の79年製の支柱は真鍮が剥き出しとなっています。
因みに左の80年製は僕が当時リアルタイムで購入したもので、当然組み替えなど行っていないエビスの正規品です。右の79年もエビス正規品のデッドストックであり、こちらも組み替えなどされていない個体だと思われます。

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左800304 右791104

こちらは5500Cの79年製と80年製。いずれもエビス正規品の最終型のブラックで、バージョンナンバーも同じ04であります。
左の80年製の個体は、中古ではありましたが僕が85年に購入したもので、全体の程度から判断して、おそらくその時点での組み替えは無かったと断言できる個体です。
右の79年製もほとんど使用感の無い極美品で、組み替えなどはされていないと思われます。

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左800304 右791104

同じようにバラしてみると、やはり80年製の支柱はメッキがかけられており、79年製の支柱は真鍮が剥き出しとなっています。

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800405 80L

こちらは所謂鍋型カップと言われる80年型の6500Cです。こちらも付属が揃ったエビスの正規品で、組み替えなどは行われていない個体だと思われます。

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ちょっと分かりにくいですが、やはり支柱はメッキがかけられた物が付いていますね。

これらのメッキがかけられた支柱の個体は、サイモン下村氏の著書に当てはめれば全て再生産品ということになってしまいます。

しかし、サイモン氏もこの程度のことは当然知っておられると思います。ただ、僕がここで発言したいのは、あのページには「80年以降は正規の生産品でもメッキの支柱が採用された物が出現する」と一言添えるべきだったのでは無いかと言うことです。

僕は彼の研究には足元にも及ばないただの素人です。彼を貶めるつもりは毛頭ありませんが、世界的な研究者が記したことは絶対であり、そのことで誤解が生まれて価値あるオリジナルの個体やパーツが再生産品や組み替え品と疑われたりすることが残念だとずっと考えていました。
特に近年日本のアングラーに人気があるアンバサダーのほとんどは、80年頃に生産された機種が多いと思われるので、今回少々生意気だとは思いましたがこのような記事を書かせていただきました。このことが少しでも皆様の参考になれば幸いです。