
厚生労働省は、本日派遣法改正案を提示しました。
企業が派遣社員の受け入れる期間の上限をなくし、3年ごとの人の交代で、同じ業務を派遣労働者に任せられるようにします。
現在は、派遣期間の上限がない専門26業務と制限がある自由化業務の2種類あるが、業務の区分けが分かりづらかった問題を解決するため、専門26業務の区分を廃止します。全ての業務が派遣期間の上限がない業務になります。
派遣期間の上限は、「業務」ではなく「人」ごとに変わります。
今までは、派遣期間の条件がきた業務を直接雇用社員が行ったり、業務分担を変更したり、業務委託化して他社にアウトソースしていました。
期限なく派遣社員を利用できるようになると、人を交代するだけで企業は同じ職場でも派遣労働者の受け入れを続けることができます。
また派遣元の派遣会社と無期雇用契約を結ぶ人(派遣会社の正社員)や60歳以上の高齢者は、上限なく同じ派遣先で働くことができるようになります。
派遣社員を長期的に利用しやすくなると、ほとんどの業務が正社員から派遣社員へと入れ替わっていく可能性があります。
派遣会社には無期雇用契約で働く社員と、案件ごとに有期雇用契約で働く社員がいます。ITエンジニアや研究系職種などの技術職では、派遣会社に正社員として雇用されているケースが多いです。
厚生労働省の案では、有期雇用契約で働く派遣社員が3年働いた時点で、派遣元会社に以下の措置を義務付けています。
【有期雇用契約者が3年働いた時の措置義務】
・派遣先に直接雇用を申し入れる
・新たな派遣先を提供する
・派遣会社で無期雇用に転換する
「派遣先に直接雇用を申し入れる」という条件が設定されていますが、直接雇用を受け入れる派遣先会社はほとんどないでしょう。この条件があると、有期雇用されている派遣社員よりも、直接雇用しなくてもよい無期雇用の派遣社員を優先して活用するようになるでしょう。
中小規模の派遣会社には、無期雇用で派遣社員を雇用する余裕もなく、また新しい求人先を開拓する営業力がある会社も少ないです。
派遣社員を無期雇用にする場合、企業のニーズと年齢に合わせたスキルを身に付けるための研修制度の構築が必須になってきます。中小規模の派遣会社には、研修を行うほどの資金力もありません。
派遣社員としての働き方を希望される方も、必然と大手の人材会社に登録するようになるでしょう。そうなると今後、中小規模の派遣会社は淘汰され、資金力とマンパワーがある大手の会社しか生き残れなくなるでしょう。また新規に参入する会社も相当に減少することが予測されます。
現在、派遣社員として働いている方全て正社員になるかというとそうでないと思います。派遣社員を研修し無期雇用しなければいけない派遣元会社は、長期的なキャリア形成を考えて20代前半ぐらいの若い人しか無期雇用契約しなくなるでしょう。
30代以上の方は、今後も有期雇用契約での派遣社員として働くことになるでしょう。
現在、正社員として働いている方も全く同じ業務で仕事を探しても雇用形態が派遣社員しかないかもしれません。
派遣会社も派遣社員を定年まで派遣先を見つけたり研修を行うことはできないでしょう。そうなると会社の定年制度を60歳以下に設定するでしょう。現在の年金受給資格が65歳からですから、定年までの期間の仕事探しが困難になるかもしれません。
今後ますます正社員の人気が強まるでしょう。
日雇い派遣については、引き続き検討中です。
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福井祐平