山口恵以子(1958~)さんは、小説家で財団法人日本文学振興会主催の第20回松本清張賞を受賞した方です。受賞作品は、「月下上海」です。
松本清張賞は、各年の良質な長篇エンターテイメント小説を表彰する公募の文学賞です。
山口恵以子さんは高校を卒業後、早稲田大学に進学します。
大学在学中は漫画家を志望しており、独学で描いた作品を出版社に持ち込んでいました。しかし、「ストーリーは面白いが絵が下手」と言われ漫画家を断念します。
山口恵以子さんは、早稲田大学を卒業後に就職した会社が倒産してしまいます。30代から派遣会社に登録し、宝飾関係の職場で働きます。
その後山口恵以子さんは、派遣社員として働きながら2時間ドラマのプロット(枠組み・構成)を多数作成します。1993年には、松竹シナリオ研究所基礎科を修了します。
山口恵以子さんは、40代半ばまでプロットを書き続けましたが、テレビ局のプロデューサーが同世代になり、「40代半ばで脚本家の芽はない」と悟り、年齢が関係ない作家への道を歩みはじめます。
2002年から、丸の内新聞事業協同組合に入社し、食堂の調理担当として働き始めます。
食堂の仕事を選択した理由も、求人広告に「定年60歳」までとの記載があったのと、派遣の仕事よりも安定していたからだそうです。
山口恵以子さんは、その後正社員登用され職場の責任者となりました。
山口恵以子さんは、番組ソロモン流に出演した際、「仕事が安定して周囲を見渡す余裕が出来た。この仕事をしていなければ決断はなかった」と語っています。
小説を書くことの魅力について質問された際、「生きがいですね。人生に失敗が無くなります。良い経験も悪い経験も全てネタになりますので。失敗の方がむしろ面白いネタになるんですよ。だから〝私の人生に失敗は無い〟」と語っています。
山口恵以子さんの座右の言葉は、孟子の『恒産なくして、恒心なし』です。意味は、一定の職業や財産を持たなければ、しっかりとした道義心や良識を持つことはできないということです。
山口恵以子さんは、結果的に正社員になっていますが、最初は非正規雇用社員でした。自身が仕事に安定を感じるのは雇用形態だけではなく収入や環境やスキルなどさまざまな要因があります。
自分自身がどんな基盤を作ると安定感を感じるのか考えてみるのもよいでしょう。