【新刊書】生態遺伝学入門 | ウッカリカサゴのブログ

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日本産魚類の仔稚魚のスケッチや標本写真、分類・同定等に関する文献情報、
趣味の沖釣り・油画などについての雑録です。


生態遺伝学入門
北野 潤 著
丸善出版
発行日 2024年01月
184ページ
定価:3,520円(本体3,200円+税10%)
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b305484.html


内容紹介
 野外で多様な生物を観察すると「この違いはどうやって生じたのだろうか?」「この違いに何か意味はあるのであろうか?」「これらは別種なのか,同種なのか?」「オスとメスは,どうしてこんなに違うのか?」などといった疑問がふつふつと湧いてくるであろう.

 本書は,こうした学生や研究者たちからの疑問に応えるために一助となる生態遺伝学の重要なポイントをできるだけ平易に説明することを目指した入門書である.

 また,ここ10年ほどの間に,次世代シークエンサーの開発によって野生生物のシークエンス解析が容易になり,集団遺伝学と進化生態学が急速に融合してきた.このような急展開を遂げつつある生態遺伝学の分野をカバーする唯一の教科書となる.

目次
第1章 生態遺伝学のための集団遺伝学入門
 1.1 2つの遺伝モデル:集団遺伝と量的遺伝
 1.2 突然変異
 1.3 移住(遺伝子流動)
 1.4 選択
 1.5 遺伝的浮動
 BOX 1:分子進化の中立説とほぼ中立説

第2章 量的遺伝学入門
 2.1 狭義の遺伝率と育種家方程式
 2.2 選択勾配
 2.3 遺伝的相関による進化のバイアス
 BOX 2:育種家方程式と選択勾配の関係

第3章 適応進化の遺伝基盤:表現型から迫る
 3.1 適応・適応度とは?
 3.2 適応形質を見つける
 3.3 適応形質の遺伝基盤を探る手法:QTL マッピング
 3.4 適応形質の遺伝基盤を探る手法:GWAS
 3.5 原因遺伝子座を絞り込めると選択係数(s)を計算できる
 3.6 フィッシャーの幾何学モデル
 BOX 3.1:選択勾配
 BOX 3.2:野生生物における選択勾配β
 BOX 3.3: QTL マッピングやGWAS に用いる個体数やマーカー数は?
 カラム:サン・マルコ聖堂のスパンドレル

第4章 適応進化の遺伝基盤:ゲノムから迫る
 4.1 ゲノム配列から選択の痕跡を探る
 4.2 選択的一掃
 4.3 連鎖不平衡
 4.4 遺伝子系図とアリル頻度スペクトラム
 4.5 遺伝的多様性の尺度πとS
 4.6 コアレセント理論
 4.7 Tajima’s D
 4.8 どのくらい前の選択的一掃まで解析可能なのか
 BOX 4:コアレセント理論を用いた集団履歴解析

第5章 適応進化の分子機構
 5.1 遺伝基盤とは?
 5.2 原因変異の特定と解析
 5.3 どういった突然変異が重要か?
 5.4 収斂進化の遺伝基盤と予測可能性
 カラム:「 決定論と偶発性」グールドの生命のテープのリプレイ思考実験

第6章 種分化の定義および内因性雑種異常の遺伝基盤
 6.1 種分化の定義
 6.2 種分化の遺伝基盤に迫るアプローチ
 6.3 ドブジャンスキー・マラー不適合
 6.4 ドブジャンスキー・マラー不適合によって生じるF1 の異常
 6.5 戻し交配で生じる異常
 6.6 F2 雑種で生じる異常
 6.7 ヘテロ接合体における適応度低下によるF1 雑種の異常
 BOX 6.1: どこまでをドブジャンスキー・マラー不適合と呼ぶのか?
 BOX 6.2:種分化の2 つの法則

第7章 生態的種分化と種分化ゲノム
 7.1 生態的種分化
 7.2 隔離遺伝子座
 7.3 遺伝的分化の指標としてのFST
 7.4 分化のゲノム島と種分化連続体
 7.5 組換え抑制と種分化
 BOX 7.1:外因性雑種不適合
 BOX 7.2:単一アリル種分化
 BOX 7.3:FST を分散で記述する
 カラム:聖ロザリアへのオマージュ

第8章 性的二型の進化遺伝機構
 8.1 性の進化
 8.2 異型配偶子の進化
 8.3 雌雄間での異類交配の進化
 8.4 性的葛藤
 8.5 性的二型の進化
 カラム:赤の女王仮説

第9章 性染色体進化の遺伝機構
 9.1 多様な性決定メカニズム
 9.2 性染色体進化の古典的モデル
 9.3 減数分裂ドライブ
 9.4 性染色体のターンオーバー
 BOX 9:種分化の2つの法則と性染色体

あとがき
謝辞
参考文献
索引

 

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2024/01/29

生態遺伝学研究室の北野潤教授の「生態遺伝学入門」が丸善出版より出版されました

 

出版に際しての北野教授のコメントです。

 

本書は、新型コロナ流行下の2020年と2022年に、在宅学習している学生たちに何かできないだろうかという使命感で実施したZoom生態遺伝学入門が下敷きになっています。

学生などからのコメントや質問が大きく役立ちました。

コロナ下で多くの活動が制限されていた中で実施したオンライン活動がこういったポジティブな形に結実して感慨深いものがあります。

また、2011年に新分野創造センターの特任准教授として国立遺伝学研究所に採用され、「生態遺伝学研究室」を開設し、多くのラボメンバーや国内外の共同研究者たちと一喜一憂しながら研究を進めてきました。

本書では、遺伝研の先人たちが築いてきた古典的な集団遺伝学の基礎から始まり、自分たちのラボを含む国内外の研究者が現在ゲノム技術を駆使して取り組んでいる先端研究の知見までの学問体系について、できるだけ平易に説明するべくつとめまとめました。

野生生物の多様性の進化研究を目指す研究者の一助となれば幸いです。