もうすぐ故 沖山先生の誕生日 | ウッカリカサゴのブログ

ウッカリカサゴのブログ

日本産魚類の仔稚魚のスケッチや標本写真、分類・同定等に関する文献情報、
趣味の沖釣り・油画などについての雑録です。

第7回稚魚研究会 (1985)西日本科学技術研究所(本文とは無関係です)

7年前の9月に急逝された沖山先生は昭和12年(1937年)7月27日生まれなので、ご存命であればもうすぐ83歳。


さて、近年の BlackWater Diving でダイバーによって撮影された浮遊期稚魚の生態写真として、特にアシロ目やヒメ目、カンムリキンメダイ目といった深海性魚類の多種多様な幼期が比較的表層で撮影されており、眼を見張るものがある。

もし先生がご存命で、これらの稚魚たちの水中生態写真をご覧になられたら、ホルマリン固定標本とは異なるその見事さにビックリされるであろう(David Johnson 博士に言わせれば、彼はきっとズボンを履いたままオシッコをちびるだろう)と想像する。

以下、稚魚研究会通信の No.14 (2006)と No.15 (2007) からの近況報告。

稚魚研究会通信 No.14 (2006) から
何時の間にか、この原稿を書く時期になりました。この1年間、特異な仔魚(体長約40mmで、特に胸鰭と腹鰭が巨大)の分類学的検討が大きな課題でしたが、やっとその結果を Ichthyological Research へ投稿することができました。1960年に採集されたこの帰属不明の仔魚の正体が明らかにされるまでに、半世紀近くを要したことになります。実はこの標本については、すでに故人となった富永さん(と当時東大の総合資料館にいた井田さん)が新属新種(俗称「ハゴロモ」)として発表する準備を進め、見事なスケッチも用意されていたのですが、思いがけない富永さんの他界によって、研究が頓挫してしまいました。最近になって、私が既に解剖された標本を精査し、これが1987年に新属新種として発表されたチョウチンハダカ科の Discoverichthys praecox に同定されることを発表したところ(IPFC7, 2005)、井田さんから富永さんが残した論文の粗稿や標本写真があることを知らされ、仔魚の全体像が一層明確になり、論文化する条件が整いました。3人の共著で纏められた原稿を眺めながら、1個体の仔魚の研究をめぐる紆余曲折と資料館で育まれた人間関係を非常に懐かしく思い起こしています。 沖山宗雄((財)海洋生物環境研究所)

参考:Muneo Okiyama, Yoshiaki Tominaga and Hitoshi Ida (2007) A megapterygium larva of Discoverichthys praecox (Aulopiformes: Ipnopidae) from the tropical western Pacific. Ichthyol Res 54, pp. 262–267.
https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s10228-007-0399-x.pdf

稚魚研究会通信 No.15(2007) から
昨年の会員通信で書いた特異な浮遊仔魚の論文が印刷になりました。これて私のライフワークの一つであったチョウチンハダカ科の稚魚分類の研究は、5属全ての仔魚が明らかになり、後はこれらを総括した論文をまとめて一段落となります。1972年に最初の論文を書いてから既に37年が過ぎました。気が遠くなるようなスローペースですが、急いで片付く研究ではありませんでした。ふと、内田先生が「稚魚を求めて」の中で、ヒラメの変態過程を明らかにするまでに約20年を要したことを挙げて、「こういう研究は性急にはできないのである」と書いていたことを思い出しました。ところで、この1年は、稚魚から離れてハゼの新種の記載に追われました。こちらは私が駿河湾で新種と思われる標本を採集してから30年以上が過ぎてしまいました。この遅れは、何とか自分の手で新種の論文を書きたいばかりに、門外漢の私が頑なに標本を抱え込んでしまったことが原因でした。松浦さんが企画した「新種プロジェクト」のお蔭で、やっと論文が陽の目を見ることになりました。反省することの多い経験でしたが、ハゼの奥深さを知ったのが大きな収穫だったと負け惜しみを言って慰めています。 沖山宗雄 (海生研) 

参考:Muneo Okiyama (2008) Platygobiopsis tansei, a New Species of Dorso-ventrally Flattened Gobiid Fish from Southern Japan. Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. A, Suppl. 2, pp. 85–96. 南日本から得られた縦扁型ハゼ科の新種ベタハゼ(新称) 
https://www.kahaku.go.jp/research/publication/zoology/s2/09Okiyama.pdf
(注:謝辞に記載されているように、沖山先生からのメールによる依頼で、骨格図にグレーの色付け作業をした。)

■【備忘録として】 今日は故 沖山先生のお誕生日
2015-07-27
https://ameblo.jp/husakasago/entry-12055184356.html

 

■バーチャル稚魚研究対話集会:追記あり
2020-06-28
https://ameblo.jp/husakasago/entry-12604036966.html